ヤブラン

神社や公園に植えられているのをよく見るが、路傍でも見かける。初夏、濃緑の葉のあいだから短い花茎が伸びる。紫のつぼみがぽつぽつと付いている姿はかわいらしい。夏から秋にかけて花茎を伸ばしつぼみが開く。紫色の穂状の花は歩いていてよく目にとまる。ランとあるがラン科ではなくキジカクシ科。白花もまれに見かける。

トウバナ

シソ科の野草。春から夏にかけて、湿った土面などで見かける。茎から輪状に花序を出して(輪生)、小さなうす紅色の花を咲かせる。とても小さいので気にしていないとなかなか目に留まらないが、一か所に群生している。すっくと茎を伸ばし花をたくさん咲かせていると辺りを照らす灯台のようにも見える。

キバナコスモス

服が半袖の頃に咲き始め、コートが必要になってくる時期まで咲いている。街路や分離帯、公園、田畑などで一面キバナコスモスという場所もあり一度見たら忘れない。いわゆるコスモス(秋桜)は、種としてはオオハルシャギクを指す。キバナコスモスは別種でオレンジや黄色の花を咲かせる。大正時代に日本に入ったが、コスモスが詩歌やポピュラー音楽に愛されるのに対し、キバナコスモスが取り上げられたものは思いつかない。

ヒメヒオウギズイセン

初夏になると、濃いオレンジ色のうつむいた花をそこここで見かける。アヤメ科のヒメヒオウギズイセン。南アフリカ原産で、明治時代に入ってきた当初の名前モントブレチア、クロコスミアとも呼ばれる。路傍、畑の一隅、草地などさまざまな場所に逸出し街中でも見かける。花は穂の下側から順番に咲いていく。いくつか頭のうえにつぼみが残っている頃が、一番きれいな気がする。

ハゼラン

スベリヒユ科。5月から6月にかけて、よく分岐した細長い茎の先に赤い球体をつけた草を路傍で見かける。夏になると5花弁の1センチに満たない赤紫色の花を咲かせる。赤い実と紫の花が入り混じる様子は華やかで、花火にも見立てられたとか。もともと西インド諸島の原産で明治時代に観賞目的で入ってきた。いまは逸出し道端や放置され鬱蒼とした花壇などを華やかにする。

14号・トンボ

「HANAYASURI」14号では、トンボについて文章を書いています。関連して写真の掲載できなかったトンボをいくつか紹介します。

表紙でハスの葉に止まっていたのはトンボ科のチョウトンボ。濃藍色でかがやく翅の形は特徴的で、ひらひらと前翅と後翅を交互にはばたかせます。都市部の公園でもしばしば見られます。

ハグロトンボはカワトンボ科のなかでは身近です。黒い翅も特徴的ですが明るい翠色の胴体には光沢があり、きらりと光って見えます。

均翅亜目モノサシトンボ科のモノサシトンボ。名前の由来は胴の節にある環状紋が定規に似ていることから。全長はイトトンボ科のトンボよりも一回り大きいです。

イトトンボ科のセスジイトトンボ。イトトンボの仲間は頭部にある眼後紋と、胸部の模様が、見分けるひとつのポイントになりますが、セスジイトトンボは眼後紋が三角形で胸部の黒条のなかに淡い色の線がはいる個体が多いのが特徴です。

こちらもイトトンボ科のホソミイトトンボ。その名の通り腹部が細長いです。眼後紋がつながっているのが特徴です。

オレンジ色のイトトンボ。これはイトトンボ科のアジアイトトンボの未成熟個体です。イトトンボの仲間の未成熟個体にはオレンジ色をしたものがあります。トンボは雌雄のほかにも、季節型、そして未成熟か成熟かで体の色などが変わります。興味がある方は、ぜひ図鑑で身近なトンボを調べてみてください。

生き物と自然へのまなざしvol.1 ウスバカゲロウ

7月からPDF連載「生き物と自然へのまなざし」をはじめました。第一回目のテーマは「ウスバカゲロウ」。透明なうつくしい翅をもつ昆虫を取り上げています。ぜひ読んでみてください。

 

vol.1 ウスバカゲロウ

 

※無断でPDFを転載することを禁じます。資料等、印刷して使用する場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。個人で読む場合は、ご自由に印刷してください。

 

 

14号・一枚の写真

「HANAYASURI」14号の一枚の写真。写真に隠れているのはジャノメチョウ科のキマダラヒカゲです。キマダラヒカゲはサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲがあり、写真は前者。ジャノメチョウの仲間は翅の裏に目玉のような模様(眼状紋)があることが特徴。種によって位置や数が異なります。サトキマダラヒカゲは市街地などにも現れ、神社などの樹液を吸うため木の周りでよく見かけます。翅を開かずに止まっていると、木肌に紛れることがよく分かります。

 

シチヘンゲ

庭先、神社の隅、公園、霊園などで小さなピンクと白の花の塊をよく見かける。クマツヅラ科の低木。属名のランタナで呼ばれることが多い。観賞用に栽培されたものがさまざまな場所に逸出している。花期は長く、一度覚えると、ここにもあそこにもとよく見かける。街中のチョウはこの花が好きである。いくつも咲いた花を行き来し、しきりと吸蜜しているときは、こちらが近づいてもあまり気にしない。