第四回出版文化を考える会・まとめ

10月19日、第四回目の出版文化を考える会を開催しました。

出版文化を考える会も四回目となり、内容も多岐にわたってきました。第一題は、前回、前々回に続き「文学者を知る」です。5人の文学者を取り上げて、自然を見つめた文学者について知識を深めました。自然を見つめたとひと言に言っても、人それぞれ、アプローチの仕方は異なります。子どもの頃から自然豊かな土地に育ち生涯親しみをもっていた人、近代化する都市から離れて農村部に身を置いた人、全国各地を旅して旅先で出会う自然を表現した人。「農」を考えるというのも身近な自然へのアプローチなのかもしれないと感じました。

第二題では、和紙について話し合いました。和紙を地域の産業として再び見直そうという動きは、各地で少しずつ生まれています。いくつかの新聞記事を読みながら、出版社が担える役割について考えました。

現代の工場では、あらゆる分野で、できるだけ製品を均一にすることが良いとされます。そのため、細かな作業に人の手を加えず、可能な限り自動化することが求められます。一方、手漉き和紙は、手作業が中心で、漉かれた紙、一枚一枚の違いが製品としての価値を持ちます。生産から出荷まで、作業工程にたくさんの人の手を加えることで成立することも、大事な意味を持つと感じました。

第三題では、来年5月に復刊を予定している月刊「はなやすり」について、復刊第一号発行までのスケジュールを確認しました。

資料はこちら→ 第四回の資料はこちら

次回は12月22日(日)の開催を予定しています。「文学者を知る」は、5人分をお話します。もう一題は、「地域の語り部・学芸員」をテーマとする企画案についてお話しする予定です。また、来年2月から2年間、名古屋国際会議場が休場となるため、来年の「出版文化を考える会」の開催についても話し合います。

 

月刊誌、ふたたび

10月6日、秋晴れとなった武豊町自然公園で観察会を開催した。たくさんの生き物と出会うことができて、楽しい観察会だった。この日の会の始まりに、一つ、お知らせをした。月刊「はなやすり」を来年5月に復刊させようと考えている、という内容である。

4月号をもって休刊してから半年間、復刊した方が良いだろうという想いは頭のなかにあったのだが、一方で、もう復刊させなくても良いのではないかという考えもあった。今でも休刊を決めた時に思った、今、考えている大切な事柄は、すべてお伝えした、という気持ちは大きく変わっていない。この半年間、観察会を通して、写真を通して、また、さまざま訪ねた先で、たくさんの人たちと出会った。そうした出会いを繰り返していくうちに、本質的には同じことであっても、形を変えながら何度でも伝え続けるのが、定期刊行誌の役割である、という制作の原点に考えが巡って、想いが帰着した。

毎月楽しみにしてくださり、「また読みます」と言ってくださった方々、これから、どこかで存在を知り、読んでくださる方々。冊子の本質が変わらなくても、そういった方たちの生活は、時々刻々、変化していく。何かの縁あって「はなやすり」と出会った方たちが、日常生活や取り組みのヒントとなる誌面を、また制作していこう、それが出版社のあるべき姿だろう。編集者としての思考の流れをトレースしてみると、そんな感じだと思う。これまでも、大切なお知らせは、まず観察会で、というスタンスだったので、ちょうど休刊から半年となる10月最初の観察会でお伝えすることにした、というわけである。

ただ、そう考えていても、購読者数が見込めないと復刊は難しい。なので、復刊を決める前に、読んでくださる方を増やさないといけない。どれくらいの数が必要かというと、最低でも、500。安定して発行を継続していくためには、700以上が望ましい。復刊のお知らせをして、すぐにそれだけの数が集まることは考えにくいので、来年3月までの半年間、徐々に周知して、購読してくださる方を増やしていけたらと思っている。

復刊後の内容はというと、「6つの編集方針」は、そのまま継続する。ここまでの半年間、自分が訪れた場所や考えていたことは、エッセイにも書いてきたので、自分でもあらためて読み直し、その内容を掘り下げていくつもりである。

もう少し具体的なキーワードを書くと、まずは「自然」「文学」「子どもたちの未来」という大きなテーマがある。「はなやすり」において、それらが重なり合い、響き合っていることはもう、ご承知いただいていると思う。

「自然」は、これまでは、知多半島の自然にまつわる話題と、「ユスリカ」「水」といった個別テーマで、研究・調査をされている先生方に文章を寄せていただいた。これからも自然について、真摯な取り組みをされている方々と、出会っていきたい。観察会レポートは、自然との関わり方の共感を生んでいると思う。これまでに2度開催した観察会報告会も、定期的にできたらよいな、と考えている。

「地域」という視点で考えると、「知多半島」「熱田」それと「伊那谷」というキーワードが浮かび上がる。それらを、その土地を管理する自治体の行政区分で、分けて捉えるのではなく、自然の動きや人の動きに連動した一連の地域という捉え方で考えれば、その周辺の土地や、物理的には遠く離れた土地も、視野に入ってくる。

書肆花鑢が考える「文学」について、より深く知るためには、「椋鳩十を読む会」「出版文化を考える会」などの会に参加していただくことが一番だと思うが、これからの文学を考える入り口となる文章を、ご協力いただき、掲載していきたい。今のところ思い浮かんでいる具体的なキーワードは「椋鳩十」「新美南吉」「巽聖歌」「藤井達吉」などである。

日常エッセイ、詩、絵のコーナーは、編集していても毎回楽しいページである。復刊後もたくさんの人に登場していただき、楽しくにぎやかなページを作っていきたい。

最後に、子どもたちの「未来」については、私は明るいと思っている。そのために、大人の都合ではなく、子どもたちが学び育つ環境に本当に必要なことを考えて、整えていかなくてはいけないだろう。今年の秋、とても長い年月を、信念をもって取り組まれた活動が、大きく結実したニュースが続いた。コツコツと真面目に取り組んできた人々に温かく陽の光が注ぎ、花が咲き、結実する時代。社会は、これから大きく変わっていくはずだ。

 

 

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“Butterfly crossing the ocean”

In October I visited a shrine on a hill by the sea in the south of peninsula. Two butterflies were flying over Eupatorium flowers. They come across the sea. In this area, those that have moved south have crossed over the Atsumi peninsula, and will now fly to Kii peninsula. Their pale blue wings were beautiful. [October 2024]

海を渡る蝶として数千キロを移動することで知られている、アサギマダラ。知多半島はその通過地点でもあり、渥美半島から渡ってきて、紀伊半島へと移動していきます。

 

「知多半島をめぐる―序—」の注文販売

10月半ばとなり、ようやく少し、秋を感じられる気温になってきました。現在、次回写真展に向けて準備を始めています。つきましては、新しい展示に先駆けて、昨年9月に開催した「知多半島をめぐる―序—」の写真を、本日より4週間の期間限定で販売します。次回写真展後は、新しい写真の販売となりますので、この機会に是非、ご購入いただけますと幸いです。

〇販売期間/2024年10月11日(金)~2024年11月8日(金)

〇販売内容/「知多半島をめぐる―序―」の写真、全30点

〇写真仕様/B4 正寸(257mm × 364mm)・インクジェット印刷・竹和紙

〇写真代金/1点につき、13,000円(プリントのみ)

〇額を購入される場合/1点につき、5,500円

〇送料/プリントのみ1点の場合、840円 額装1点の場合、1,270円 ※定形外郵便+簡易書留の料金となります。2点以上ご注文される場合は、注文確認メールでお知らせします。

〇備考/期間中はプリント枚数を制限せずに販売します。お届け時に同梱する販売証明書は、大切に保管してください。

 

―ご注文からお届けまで—

①「作品一覧」より写真をお選びいただき、フォームよりご注文ください。

②フォーム送信後、数日以内に書肆花鑢より注文確認メールを送らせて頂きます。

③メールが届きましたら、注文内容に間違いが無いかご確認いただき、指定の振込口座に代金をお支払いください。

④お振込み後、注文確認メールに、発送先ご住所とお電話番号をご返信ください。

⑤販売期間終了後、制作します。写真のお届けは、11月下旬になります。

 

「知多半島をめぐる―序—」作品一覧

ご注文フォームはこちら

 

童話の森の文化祭のお知らせ

11月2(土)・3日(日・祝)・4日(月・祝)にかけて、新美南吉記念館敷地内(童話の森)で開催される「童話の森の文化祭」(主催:特定非営利活動法人ごんのふるさとネットワーク)。期間中は毎日、自然の素材を使ったワークショップが行われ、マーケットが並びます。散策路内には、新美南吉にインスピレーションを受けたアート作品が展示され、記念館でも「センス・オブ・ワンダー」をテーマにしたミニ展示が行われています。各日、ミュージカル、南吉の詩のお話、自然観察会など特別な企画も満載です。

3日(日・祝)の夜、相地透の案内で「童話の森で鳴く虫の観察会」(17:30~、18:30~の2回)を行います。童話の森を歩きながら、晩秋の虫たちの音に耳を傾けます。是非、お申し込みの上、お越しください(※事前申込制で、定員に限りがあります)。「童話の森の文化祭」のイベント詳細と参加のお申し込みは、以下のリンクよりお願い致します。

イベントの詳細はこちら(新美南吉記念館イベントのページ)

 

はなやすり出版文化を考える会(10/19)・内容変更

10月19日(土)に開催する「はなやすり出版文化を考える会」の内容を一部変更します。

第四回となる今回の内容は、

〇題目1「文学者を知る11~15」
〇題目2「和紙産業と出版活動」
〇題目3「2025年度、月刊『HANAYASURI』について」

と題し、考えます。

題目1で取り上げる文学者は、重要文学者一覧(下記、PDFをご覧ください)をご確認ください。今回は、「薄田泣菫」「若山牧水」「浜田広介」「金子みすゞ」「島木健作」の5人を取り上げます。初めての方は、第二回、第三回のまとめの記事内に、「文学者を知る1~10」の資料がありますので、ご覧ください。

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第三回のまとめはこちら

第二回のまとめはこちら

題目2では「和紙」について考えます。全国には、およそ70か所以上の和紙の里があります。かつてはもっとありましたが、洋紙の登場や生産の機械化により、自然の循環を活かして営まれる和紙の生産を続けている地域は、大きく減っています。

和紙を重要な伝統産業と捉えている地域では、岐阜県の美濃和紙は、紙を漉く職人だけでなく、和紙の生産に用いられる道具を作る職人も地域に暮らしており、土地の自然とともに産業が成立しています。長野県には、全村で和紙の生産をしていた地域があり、現在は伝統を継承する活動をしている方々がおられます。

和紙の技術を活かした新たな取り組みも生まれています。青森県の津軽には、廃棄していたリンゴの枝を用いて紙を漉き、出来上がった和紙を使って工芸品を作っている地域があります。世界に目を向ければ、アフリカなどで生産されるバナナの葉を使ったバナナペーパーも日本の和紙生産技術が応用されています。

和紙の文化を学び、出版が担う役割について考えます。

追加となる題目3は、来年5月に復刊を予定している月刊「HANAYASURI」について編集人としての考えをお伝えします。休刊から半年が経過しましたが、いよいよ復刊に向けて始動します。来年度の「HANAYASURI」の取り組みに、積極的に関わりたい方がいらっしゃいましたら、是非ご参加ください。復刊までの流れや予定・検討している内容など、まずは話を聞いてみたいという方も歓迎です。

 

<会場>

名古屋国際会議場 会議室433

会場のホームページはこちら

<日時>

2024年10月19日(土) 13:15開始 16:30終了 ※途中、休憩を入れます。

<参加資格>

①1977年1月1日以降生まれの方

②出版に関する知識は、まずは必要ありません。豊富な知識よりも出版について興味・関心があり、ご自身の様々な体験を通した経験をもとに、話し合いに参加できる方を歓迎します。話し合いに参加して、今、取り組んでいる活動や、携わっている仕事に活かしたい方、出版社がつくられていく過程を目の当たりに出来るという稀な機会を一緒に楽しみながら考えたい方も、ぜひお越しください。

<参加費用>

1,500円(会場費、資料費等に使用します)

<定員>

15名

<懇親会>

終了後、懇親会を予定しています(17:30~19:00、場所:コメダ珈琲店)。お気軽にご参加ください。

 

参加のお申込はこちら

 

武豊町自然公園を歩く

知多半島の中央より少し南に位置する、武豊町自然公園。昨年12月、例年のごとく新しい観察地を探して各地を回っていて、これまで気になっていたが訪ねたことが無かった、この自然公園を歩いてみた。その日は、広くて植物の変化に富んだ良い森だな、という印象だった。そのうちに、また来よう、と思いながらも、今年の5月まで再訪する機会がなかった。

春になり、5月に訪ねてみて、驚いた。松林でハルゼミが鳴いていたのである。ハルゼミは新美南吉の童話にも「松蝉」という名で登場し、春を代表する昆虫である。一斉に鳴いては消えてを繰り返す、柔らかな蝉しぐれは、かつて身近な「春の音」だったが、ハルゼミの生息する松林は、知多半島に限らず、松枯れや伐採によってずいぶん減少している。毎年気にしていて、ようやくここで音を聞くことができた。松の木の上の方で鳴いているので、なかなか姿を見ることができないが、たまたま生きているオスも下に落ちていた。

そんなきっかけが一つあると、途端に、その森が大切に思えてくる。これも、縁なのだと思う。そうしてこれまで、毎年のように、少しずつ観察地を増やしてきた。

半年近くが経ち、自然公園も親しみある観察地になってきた。訪ねる度に、その時々の発見があって、楽しい。これまでの印象的な出来事を記しておくと、5月には、ヒバカリと出会った。田んぼの近くに暮らす、体長40センチほどの小型のヘビで、オタマジャクシなどを食べる。家に連れて帰って来たが、近くにオタマジャクシがいるような場所は無い。思案していると、市内の緑地の水路に、ウシガエルのオタマジャクシがいるということで、大変有難いことに、それを持ってきて頂き、エサにした。だが、とにかく食べる量が多いので、武豊に返すまで大変だった。同じ日にルリタテハの幼虫も連れて帰ったが、こちらは家で蛹になった。だが、5カ月近く経った今も蛹のままである。羽化はもう難しいかもしれない。

6月の田んぼには、コオイムシがいたり、ゲンゴロウの仲間やマツモムシが泳ぎ回っていたり、にぎやかな田の風景があった。トンボも夏にかけて数多くあらわれた。「夏の観察会」では、「カブトムシを見つけたい」という小学2年生の男の子が参加してくれた。カブトムシは見つからなかったが、コナラの木にノコギリクワガタを見つけて、みんなで喜ぶ。アカガエルと出会い、海の見える展望台がある広場の東屋で、そろってお弁当を食べ、真っ赤なホシベニカミキリも見つけて、のどかで楽しい雑木林の散策となった。

7月。瀬戸で変形菌の調査をされている先生と一緒に変形菌を探した。森の環境、植生を気にしながら、落ち葉の積もる林床を確認して歩く。探している珍種、ツツスワリホコリは発見できなかったが、変形菌という、気にしていなかった存在に目が向くきっかけとなり、その後、ムラサキホコリの仲間、バークレイホネホコリ、エダナシツノホコリ、ツノホコリ、アカモジホコリ、シロウツボホコリ(?)、ムラサキカビモドキ(細胞性粘菌といい、変形菌ではないのだが、変形菌に似た存在)など、少しずつ見つけられるようになってきた。

8月には、たくさんの昆虫と出会った。とくに10日は多く、古窯跡付近では、木の上からスズメバチが絡み合いながら落ちてきて、驚いた。地面に落ちてからもしばらく組み合っていたのだが、喧嘩をしていたのだろうか? 木の幹にはヨコヅナサシガメの幼虫。ひらひらと透き通る翅で林内を舞っていたのは、クサカゲロウ科の最大種、アミメクサカゲロウ。他のクサカゲロウよりも明らかに大きいので、すぐに判別できる。

この日に確認したトンボの仲間は、ウスバキトンボ、ヒメアカネ、アキアカネ、コノシメトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、コシアキトンボ、ハグロトンボ、ギンヤンマ、カトリヤンマ、ホソミイトトンボ。チョウの仲間は、ルリシジミ、ムラサキシジミ、ウラギンシジミ、キアゲハ、アオスジアゲハ、キマダラヒカゲ、コノマチョウ、イシガケチョウ、コミスジ、イチモンジセセリ、テングチョウ、種は確認できなかったが黒いアゲハチョウ。ほかに、ヤブキリ、ツマグロバッタ、クサギカメムシなど。別の日には、直翅類ではあるが、鳴くための翅をもたないハネナシコロギスが草むらの葉の上にいた。

10月になり、林内ではツクツクボウシが、まだ鳴いている。昼間でもハラオカメコオロギやクチキコオロギ、カネタタキの音が聞こえてくる。クサヒバリの音も樹上から聞こえるようになった。秋の森。まだまだやぶ蚊が多いのが悩みどころであるが、晩秋から冬にかけて、どんな出会いがあるのか楽しみにして、また訪ねようと思う。

 

 

「秋の観察会 in 富貴」のお知らせ

夏に続き、2回目となる武豊町・富貴での観察会です。知多半島の内陸部は、南北に半島の背とも言える小高い山が続き、雑木林が残っています。武豊町自然公園もその一つです。5月には松林でハルゼミが鳴いており、6月の観察会では、ノコギリクワガタやコクワガタを見つけました。夏の間にぎやかだったセミたちは、そろそろ鳴き終わる頃です。雑木林に訪れた静かな秋を感じながら、観察して歩きます。(写真は9月に撮影。下の写真は雑木林に生息する鳴く虫、ササキリ)

〇日程/2024年10月6日(日)

〇時間/13:30集合~15:30頃、終了予定 ※場合によっては30分ほど延長することもあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/武豊町自然公園・駐車場 地図はこちら

※自動車の場合は、武豊自然公園南門の駐車場にお越しください。場所が分かりにくいため、不安な方は分かりやすい場所で待ち合わせますので、お知らせください。電車の場合は、最寄りが「富貴」駅になります。13:13着の電車(河和行き、急行)でお越しいただけましたら迎えに行きますので、その旨お知らせください。駅からは車で7~8分ほどです。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に、お弁当など昼食をとられる方は、各自ご用意ください。トイレは展望広場にありますが、なるべく済ませてからお越しください。やぶ蚊の対策(虫よけスプレー、長袖、蚊取り線香など)をお願いします。少し長い距離(約2キロ)を歩きながらの観察となります。汚れてもよい、歩きやすい靴でお越しください。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。虫捕りをしたい方は、虫かご、虫捕り網などをご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

終了しました。ご参加いただきありがとうございました。

 

喬木村と日本橋

8月に、喬木村にある椋鳩十記念館・記念図書館を訪ねた。「はなやすり」にも文章を寄せてくださった前館長、菅沼利光さんによる文学講座「ああ! 椋鳩十は詩人だったんだ」を聞くことが目的だった。少し早く着いたので、記念館の裏山の上にある、とろりんこ公園まで登ることにした。ここには、椋鳩十の詩碑が建てられている。「夕陽がうすれていく 蜩が今日の終りを呼びとめてゐる」。毎年夏になると、「カナカナカナカナ……」と夕暮れに鳴くヒグラシの音が聞きたくなるのだが、名古屋や知多半島では聞くことができない。ここ数年、8月に下伊那に来ているのだが、こちらでも、まだ聞けていない。調べてみると、夏の終わりに鳴くイメージだったが、一番よく鳴いているのは7月とのことだった。

記念館に到着し、館長の木下さんと少しお話をする。階段下のテーブルでくつろいでいる猫館長のムクニャンにも挨拶して、2階の視聴覚室に上がる。次第に聴講の人たちが増えていき、部屋はいっぱいになった。

「椋鳩十の詩」についての講演が始まる。椋鳩十は「動物と人の関わりを描いた物語作家」というイメージが一般的に定着しているが、若い頃は詩に憧れて、自分でも詩集を作っていた。青年時代に、どのような詩に憧れ、自分の表現を目指していたのか、熱量が高く、それでいて、知的探求心を刺激される話が展開される。後年の物語に登場する美しい色や、個性的な擬音表現のベースが若き日の詩作によって生まれていることを実感でき、さらに、椋鳩十が生きた時代の詩人たちや当時の詩の状況も知れて、充実した2時間の講座だった。

終わった後、少し時間があったので、図書館の本棚を観たりしていると、チラシや案内などが置いてあるロビーの壁に掛けてある額が目に留まった。そこには中国のことわざと芭蕉の言葉を引いて、自然を観察する大切さを説いた、椋鳩十の言葉が書かれていた。

「中国の言葉に『方の外に遊ぶ』というのがある。芭蕉はこのことを『角(※格)に入って角(※格)に出でよ』と言った。方というのは四角四面、融通がきかないということ。ものを覚えたら、もうそれだけだ。(中略)山道を歩いていく。枯れた木がある。葉の落ちた木がある。雪が積もっている。その木の下に、指の先ほど赤い血がぽつんと落ちている。あら、血が落ちておるな、小指の先ほどの小さな血だな、そう思ってみただけでは目で見ただけで、これが、この木の枝の上に雀がいたのかな、鳩がいたのかもしれない、あるいは何か他の小鳥がいたのかな、その小鳥が昨晩のうちにフクロウに襲われたその残りの血かな、あるいはテンに襲われた残り血かな、そう思ってみただけでも、自然の摂理というものが浮かんでくる。方の外で遊ぶというのは、こういう広い心をもってものを見なければ、自然は本当の姿を、今目に見えている向こうにある姿を見せないぞ、こういうことを言っている」

9月に入り、日帰りで東京に行った。主な用事は午後からだったので、午前中は日本橋にある美術館を訪ねることにした。三連休で新幹線は混雑していたが、プラットフォームを先頭車両の先、日本橋方面の出口へと下りていく人は少ない。東京駅を出て永代通りを歩く。残暑ではあったが、名古屋よりも幾分カラッとしていて、ビル風も吹いていた。数分で石造りの日本橋が見えてきた。欄干では麒麟の像が、橋を見守っている。

年始の箱根駅伝でもよく知られている日本橋には、これまで縁が無く、東京駅の近郊にありながら、訪ねる機会が無かった。日本の東西をつなぐ交通の大動脈・東海道の東の起点である。ここから西の起点である京都の三条大橋に至るまでに53の宿場があり、東海道五十三次と呼ばれる。熱田の宮宿は、41番目にあたる。

現在でも日本橋は全国に伸びる国道の起点となっている。橋のたもとには、里程標の石碑が置かれて、主要都市までの距離が記してある。抜粋すると「千葉市 三七粁」「仙台市 三五〇粁」「名古屋市 三七〇粁」「京都市 五〇三粁」「鹿児島市 一、四六九粁」。

芭蕉は故郷である伊賀から上京し、江戸でもっともにぎわいのある日本橋で8年間暮らしていた。俳諧の師匠である宗匠として独り立ちした時、「発句也 松尾桃青 宿の春」という句をこの地で詠んだ。その後、隅田川の対岸、鄙びた土地である深川に居を構え、日本橋を拠点にして各地へ旅に出た。東の果ては、平泉。平泉で詠んだのは「夏草や兵どもが夢の跡」。西の果ては、明石。明石で詠んだのは「蛸壺やはかなき夢を夏の月」。若さ溢れる旅立ちの春、強者が去り、はかない香りが漂う夏。では、秋は……。

 

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“Cricket in decaying tree”

In the lingering summer heat, I visited the forest on the beginning. The forest was first one visited for this observation five years ago. I walked up the hill in the forest and put my hands together in front of a small shrine. When I turned around, a cricket popped up in the grass. It was a cricket living in a decaying tree. I hadn’t met him yet, so I wonder if he had gone out of his way to come out and see me. [September 2024]

Duolandrevus ivani

クチキコオロギは、枯れ木の樹皮の裏などに生息しており、体長はエンマコオロギと同じか、少し大きいくらいのサイズですが、翅が短いのですぐに分かります。一年を通して、活動しています。