SCENE in the pen. 104

“Powdery weevils”

I came to the woods in early summer. As I was looking at the clump of adder’s tongue ferns, I notice a weevil perched on the tip. As soon as I noticed one, I spotted several more in the grass around me. This weevil, covered green powder, does not have a long proboscis. [MAY 2026]

Eugnathus distinctus

 

おもにクズの葉につくコフキゾウムシ。緑色の粉をふいた体が特徴的です。ゾウムシの仲間ですが口吻は長くありません。体長5ミリほどと小さいので目に留まりづらいですが、色んなところで見かけます。

 

<Traduction en français>

SCÈNE dans la pen. 104  “Des charançons recouverts de poudre”

Je suis arrivé dans la forêt au début de l’été. En observant la buisson de langue de serpent fougères, j’ai remarqué un charançon perché à son extrémité. Quand j’en ai aperçu un, j’ai vu qu’il se trouvait sur l’herbe autour de moi. Ce charançon recouvert de cette poudre verte n’a pas de long rostre.  [Mai 2026]

 

「初夏の観察会」のお知らせ

「初夏の観察会」のお知らせです。観察地は、武豊町自然公園。初夏、自然公園の周辺では、たくさんの花が咲きます。松林では、新美南吉が「松ゼミ」と呼んで親しんだ、ハルゼミが鳴き、ホトトギスの声も雑木林に響きます。木から垂れ下がって咲くテイカカズラの花。林床には稀少なムヨウラン。水を含んだ土と草の匂いが心地よい雑木林を抜ければ、昔ながらの谷あいの田んぼ。自然公園の初夏の空気を体いっぱいに吸い込んで歩きます。(写真は、ハルゼミ。2024年5月撮影)

 

〇日程/2026年5月10日(日)

〇時間/13:30集合~16:00頃、終了予定 ※30分ほど延長することがあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/武豊町富貴・自然公園南門駐車場 地図はこちら

※自動車の場合は、知多半島道路「武豊インター」を下りて、右折。すぐ先の「嶋田」交差点を右折し、県道272号を直進。突き当りの交差点「武豊運動公園前」を右折。しばらく走り、知多半島道路の高架を越えると、右手に駐車場があります。インターからは、7~8分ほどです。

※電車の場合は、最寄りが名鉄「富貴」駅になります。13:12着の列車(河和行)でお越しいただけましたら、迎えに行きます。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に昼食をとられる方は、各自ご用意ください。トイレは、自然公園駐車場にあります。ぬかるんでいる場所もあります。歩きやすい靴でお越しください。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

お申し込みはこちら

 

椋鳩十を読む会・5月

奇数月第3土曜日に開催している「椋鳩十を読む会」。椋鳩十の文学作品を読み解きながら楽しく活動しています。今年は、午前と午後の二部制で開催しています。

午前の部は、今池にある音楽スタジオ「CORE SELDOM(芸音)」で歌の練習をします。開始時間が11:00になりますので、10分前には、スタジオにお越しください。練習後、各自昼食をとって、中生涯学習センターへ移動。時間に余裕をもたせて、13:30から読書会を始めます。午前だけ、午後だけの参加でも大丈夫です。たくさんのご参加をお待ちしております。

〇日程/2026年5月16日(土)①11:00~12:00 ②13:30~16:30

〇場所/①スタジオCORE SELDOM(芸音) ②中生涯学習センター・第1集会室

〇アクセス/①名古屋市営地下鉄「今池」駅下車。1番出口を出て、正面徒歩2分。近隣にコインパーキング有り。 ②名古屋市営地下鉄「上前津」駅下車。6番出口を出て、大津通り沿いに東別院方面へ進み、「下前津」交差点を右折すると着きます。徒歩8分。有料駐車場有り(1回300円)。

★地図はこちら↓

スタジオCORE SELDOM (芸音)の場所

中生涯学習センターの場所

〇参加費/大人700円、子ども(小学生以下)350円 ※資料代、会場代に使用

〇内容/<スタジオ>・歌の練習 <生涯学習センター>・お知らせ ・読解「椋鳩十と戦争」~第六章 ・課題図書「孤島の野犬」

〇備考/・初めての方には、当日楽譜をお渡しします。・「孤島の野犬」は長い物語です。「椋鳩十全集5」(ポプラ社)、「孤島の野犬」(偕成社文庫)で全文を読むことが出来ます。当日は「椋鳩十の野犬物語」(理論社)の収録個所を読みます。・「椋鳩十と戦争」(多胡吉郎著/書肆侃侃房、2024)は、「第六章」(※片耳の大鹿の章)を読み解きます。・初めての方もお気軽にご参加ください。

 

参加を希望される方は、mail(at)hanayasuribooks.com(相地透)までご連絡ください。

 

5月・6月の観察会スケジュール

春もそろそろ終わり始め、道端では、ヒメコバンソウなどイネ科の植物を見かけるようになりました。5月、6月の観察会スケジュールのお知らせです。

 

<5月の観察会スケジュール>

「初夏の観察会」

日時:5/10(日) 13:30~15:30

場所:武豊町富貴・自然公園

◇武豊町自然公園での観察会は、3年目。今年は、昨年の初夏の観察会よりも少し早い開催です。昨年はほとんど聞こえなかったハルゼミや、夏の到来を告げるホトトギスの鳴き声を探しながら、雑木林の花と生きものを観察します。

内容の詳細はこちら

 

「第15回 椋鳩十を読む会」

日時:5/16(土) 11:00~12:00/13:30~16:30

場所:CORE SELDOM(芸音)/中生涯学習センター

◇午前の部は、スタジオで歌の練習をします。午後の部の課題図書は「孤島の野犬」です。3部作の長い物語ですので、「椋鳩十の野犬物語」(理論社)には、2部、3部しか収録されていません。全文は「椋鳩十全集(5)孤島の野犬」(ポプラ社)、「孤島の野犬」(偕成社文庫)で読むことが出来ます。当日は、3部作のうち「丘の野犬」を読む予定です。「椋鳩十と戦争」は、「第6章」(片耳の大シカの章)を読みます。会場は、いつもの昭和生涯学習センターでは、ありません。ご注意ください。

内容の詳細はこちら

 

「ヒメボタルの観察会」

日時:5/23(土) 21:30~23:00

場所:東海市・姫島神社ほか(変更の場合あり)

◇2年ぶりに、ヒメボタルの観察会です。ヒメボタルは、一生を陸で過ごす陸生ホタル。主に雑木林などに生息しています。オスは、金色の光をピカピカと点滅させながら、木々の間を飛び、メスを探します。飛翔発光の始まる時間が、深夜になるため、21時半頃から観察を始めます。

※内容の詳細は、5月中旬に掲載します。

 

<6月の観察会スケジュール>

「ヘイケボタルの観察会」

日時:6/6(土) 19:30~21:00

場所:美浜町奥田

◇美浜町の田んぼでは、この時期、ヘイケボタルがあらわれます。かつては、人々の生活にとても身近なホタルでしたが、生育環境の変化により、自生地は激減しています。緑色の光をゆっくりと明滅させながら、田んぼの水面を飛ぶヘイケボタルを観察します。

 

「第1回 モンテッソーリ読書会」

日時:6/14(日) 13:30~16:30

場所:名古屋市中区・中生涯学習センター(※予定)

◇昨年12月に準備会を開催したモンテッソーリ読書会。今年は、6月、8月の読書会で、テキストの第1章、第2章を読みます。第一回目は、「第1章マリヤ・モンテッソーリのしごと」です。参加を検討していて、まだテキストを入手していない方は、お早めにご連絡ください。

※内容のお問い合わせ、テキストの入手は、mail(at)hanayasuribooks.com(相地透)にご連絡ください。

 

「第32回 西味鋺観察会」

日時:6/27(土) 10:00~12:00

場所:西味鋺コミュニティセンター

◇今回は、矢田川水辺の広場で、水生昆虫など生きものを探します。小魚やヤゴなどを捕まえて、飼ってみたいという方は、虫かごやバケツなど容器を準備して、ご参加ください。

 

※6月の観察会の詳細は、5月下旬以降掲載します。

 

観察会「海浜植物の花をみる」のお知らせ

観察会「海浜植物の花をみる」のお知らせです。常滑市にある鬼崎漁港近くの海岸では、この時期、ハマヒルガオ、コマツヨイグサ、コウボウムギ、コウボウシバ、ハマボウフウ、ツルナなど海浜植物の花が咲き揃います。また、全国的にも生育地が少なく貴重なスナビキソウの自生地でもあります。初夏間近の海風を感じながら、散策します。(写真は、コウボウムギ。4月撮影)

 

〇日程/2026年4月29日(水・祝)

〇時間/13:15集合~15:30頃、終了予定 ※30分ほど延長することがあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/常滑市・名鉄「蒲池」駅前

※自動車の場合は、「とこなめ市民交流センター」駐車場(地図はこちら)に車を止めて、お越しください。名古屋方面からは、国道155号線沿い「午新田」交差点を右折し、2分ほどです。

※電車の場合は、最寄りが「蒲池」駅になります。13:14着の列車(名鉄常滑線、中部国際空港行)がちょうど良い時間になります。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に昼食をとられる方は、各自ご用意ください。トイレは、蒲池駅、市民交流センターにあります。砂浜を歩きます。歩きやすい靴でお越しください。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

終了しました。ご参加いただき、ありがとうございました。

 

伊那谷をめぐる(八) 座禅草、花木、片栗(下)

4月5日。今年も喬木村の阿島祭りの季節がやってきた。3月になると、今年はどうしようかと考える。春は、いろいろすることが多くなってくるので、気ぜわしい。今年はやめておこうかなと思いながらも、半ばを過ぎてくると、やっぱり行こうと思い到る。

一年が巡って、今年もやってきた春。五穀豊穣、商売繫盛、無病息災、家内安全。地域に暮らす子どもたちの健やかな成長祈願。古くから土地に息づくお祭りは、さまざまな意味をもつけれども、大きく言えば「季節を祝う」ということなのだと思う。春には、春の祭り。夏には、夏の祭り。秋には、秋の祭り。冬には、冬の祭り。季節ごとのお祭りを自分の暮らす地域で想い描けるということは、とても、心に豊かなことだと思う。

午前中、喬木村に行く前に、飯田市梅ケ久保にあるカタクリの里を訪ねることにした。飯田インターを下りて、いつもとは反対方向である山側に折れる。この秋に登ろうと思っている飯田のシンボル・風越山(1535メートル)と、その手前の虚空蔵山(1130メートル)を右手に見ながら、笠松山(1261メートル)の麓を目指す。道は分かりやすく、道中案内も立ててあり、インターを下りて10分ほどで到着した。途中、枝垂れ桜がきれいに咲いていた。こちらに来ると、枝垂れ桜をよく見かける。伊那谷の桜は、全体的に少しクリームがかった、落ち着いた色合いをしている気がする。

開花時期を調べずに来たため、咲いているのか不安だったけれど、「終わった花もあるけれど、またたくさん咲いていますよ」とのこと。木道を歩くと、数千株のカタクリの花が咲きそろっていた。見事で楽しくなる。花は、やや赤みのかかった紫色だが、おぼろげな色。裏側が白いため、染めた花弁の色が裏に滲んだようにも見える。

しゃがんで花を観ていると、「アリがいるよ」と呼ばれた。行ってみると、胸部の赤い大きなアリが、忙しそうに歩いていた。そういえば、似たようなアリをハナノキ湿地のそばの畑沿いで見たな、と思い出す。そちらのアリは、赤い胸部が尖っていた。帰ってから調べてみると、カタクリの里で見たのは、ムネアカオオアリ。湿地のそばで見た尖っていたのは、トゲアリ。トゲアリは、朽木、枯れ木などに巣を作るムネアカオオアリなどの巣に、一時的に寄生するらしい。ムネアカオオアリにとっては天敵だ。巣を作らずに集団移動するアミメアリという種もいるし、社会性を持つと、それに従い、集団独自の行動様式が生まれる。

カタクリの里は、約1ヘクタールと広い。林縁の植物を観察しながら、傾斜を上がる。伊那谷では見慣れてきたシダの仲間、トウゲシバ、マンネンスギ、ヒカゲノカズラ。3月の訪問地では咲いていなかった、ショウジョウバカマ。一緒に来ている小学生の男の子が「スミレがあった」と教えてくれたので、行ってみる。名古屋や知多半島では見かけない種類。ほとんど白に近い、淡い藤色の花を横から見ると、距が細長く、赤紫色がよく目立つ。茎や萼、葉の葉脈や裏側が、赤みがかっている。調べてみると、ゲンジスミレのようだ。ゲンジスミレは、長野に多いスミレの仲間で、ほかには、東北、関東、中国、四国地方に隔離分布する。

なぜ遠く離れた土地に分布しているのかは分かっていない。スミレの種子散布というと、弾けて飛ぶほかに、アリによる散布が知られている。普通に考えたら、一か所から周辺に広がっていくと思うが、アミメアリのような移動性のアリが運んでいったのだろうか。そもそも満遍なくあったが、何かしらの理由で、今あるところにだけ残ったのかもしれない。分布している土地だけに共通する地質があるのだろうか。「源氏菫」という、どこか文学にも近そうな種名も相まって、気になる存在になってくる。

木では、キブシの花が咲いていた。シダの上に散っていた黄色い花は、ダンコウバイ。この木の花も丘陵地に春を告げる。ハナノキも花が咲いていた。花穂が風に揺れるハンノキの枝には、少し大きな鳥が止まっていた。「ギャッ」と鳴いて飛んだので、カケス。

ゆっくり観ているうちに、時間を大幅に超えていることに気づく。川面に棚引く鯉のぼりと、川向うの桜を見ながら、急ぎ足で下りる。入り口に戻ると、自然愛護会の方々が、一つ一つ育てた鉢植えを販売していた。タンチョウソウ、イカリソウ、オキナグサ。植木鉢を見て、みな話が弾む。カタクリも花が咲くまで、7年かかる。時間をかけて花を増やしていくには、土地の自然に深い親しみが無ければできない。名残惜しいが、喬木村へ出発。正面に見える伊那山地の麓から、明るいお囃子の音が聞こえた気がした。

 

 

伊那谷をめぐる(七) 座禅草、花木、片栗(中)

ハナノキは、カエデ科の樹木である。3月になると湿地の周辺で、若葉の出る前に、赤い花を咲かせる。花のあとにできる種子はプロペラ状。くるくると風にのって分布を広げる。秋になると、イロハモミジなど、ほかの楓の仲間と同じように紅葉する。

ハナノキのルーツはとても古い。祖先種であるブラウンカエデの化石が、約1300万年前の地層から見つかっている。1300万年前というと、地質学的には新生代第三紀にあたる。現在、私たちが生きている時代は、新生代第四紀。恐竜がいたのは、新生代の一つ前の時代である中生代。第三紀は、恐竜が絶滅して長い年月が経ち、地球全体が暖かくなり、被子植物が大地を緑にし、ほ乳類が繫栄し始めた時代。北極周辺で繁栄していた祖先が、繰り返し訪れた氷河期を乗り越えて、形を変え、北米、日本で生き残った。

ハナノキは日本固有種であり、恵那山周辺の長野、愛知、岐阜に自生地が集中している。愛知県では県の花になっているが、自生地は少ない。武豊町の自然公園にもハナノキはたくさん生えているのだが、ずいぶん昔に人が移し入れたものが増えたのだろう。

伊那谷の自生地は、飯田市、阿智村、阿南町に広がる。以前、飯田市美術博物館を訪ねたとき、ミュージアムショップに並んでいた「ハナノキ湿地の自然史 赤き楓のシンフォニー」(2008)という展覧会図録が目に留まった。ハナノキの紅葉と裏表紙には花の写真。地の色も赤い、真っ赤な装幀の図録。この図録の印象はとても強く、毎年ハナノキを見に行きたいなと思いつつも、春は訪ねる場所も多く、機会に恵まれなかった。そろそろ行ってみようと思い、この春に飯田市山本周辺のハナノキ湿地の一つを訪ねてみることにした。

2月、まずは場所を確認するため、ザゼンソウを観に行く前に立ち寄ることにした。目印の付けられた駐車場に車をとめて、周辺を歩いてみる。湿地にはどこから入るのだろうと思いながら、植林されたヒノキの道を歩いていく。道をしばらく進むと、目の前に山並みが開けた。伊那谷で観察していると、どこを歩いても、急に目の前が開けて、山並みが見える場所がある。河岸段丘による起伏に富んだ地形は、風景を絵にしている。

なだらかな崖をコケがおおっている。前日まで雨が降っていたこともあり、葉の開いたコケがきれいだ。ハイゴケ、シラガゴケの仲間は見て分かる。地衣類のコアカミゴケもある。昨年の冬、足助で訪ねた、農村舞台のある諏訪神社の石垣も、ハイゴケ、シラガゴケ、コアカミゴケが目立っていたなと思い出す。少し歩くと、シダの仲間であるマンネンスギがあった。杉の葉によく似ている。そばには、ヒカゲノカズラの群落もあった。

入るところが分からなかったため、駐車場まで引き返す。戻って周辺をきょろきょろ見ていたら、100メートルほど先の道路沿いに入口があった。ずいぶん先まで歩いてしまったけれども、周辺散策だけでも十分満足したので、移動することにした。立ち去り際、ほんのり黄色いチョウが眠たそうに飛んでいたので、写真に撮り、帰ってから確認すると、スジボソヤマキチョウだった。伊那谷らしい昆虫と出会えたので、嬉しくなる。

3月24日。あらためてハナノキ湿地を訪ねた。気温も上がり、生きものも本格的に動き出していて、スジグロシロチョウ、コツバメが飛んでいた。ハナノキは、ほぼ満開。赤い花がよく見える。少し後に満開となる桜の趣とは、だいぶ違う。自然に流れる時間に身を任せられなければ、美しさに気づくのは難しそうである。季節によって、場所によって、時間の流れが異なるのなら、それぞれの季節に咲く花々に、心を重ねられるようにありたい。

ちょうど保全活動をされている方たちが来て作業をされていたので、車でお弁当を食べていたら、「見ていってください」と声を掛けてくださった。道路から谷へ下る。背の高いハナノキを見上げながら、雄木と雌木のこと、ハナノキの分布のこと、湿地の植物のことなどを教えてもらった。定期的に観察会もされているそうなので、ちょうど良い機会があったら参加してみたいと思った。雑木林を歩くと、思った以上に広いことが分かり、ルリタテハ、テングチョウ、オナシカワゲラなど春の虫たちがいて、気持ちの良いところだった。

家に帰って、あらためて図録を読み直していたら、滋賀県東近江市には、聖徳太子お手植えといわれるハナノキの古木があると書いてあった。伊那谷をめぐっていると、聖徳太子の碑をよく見かける。もしかしたら、1400年前、伊那谷を訪ねた聖徳太子が、ハナノキの美しさに魅かれ、幼木を持ち帰って植えたのかもしれないなと想像した。〈下に続く〉

 

 

伊那谷をめぐる(六) 座禅草、花木、片栗(上)

お彼岸に墓参りに行くと、手を合わせて、舎利礼文を唱える。これまで何回も唱えているし、短いので、これだけは最初から最後まで正確に覚えている。そういえば舎利礼文というお経のことをよく知らないなと思い、少し調べてみると、曹洞宗の開祖である道元が、火葬の際に唱えていた経文で、曹洞宗では重要視されているそうだ。

以前、曹洞宗の僧侶の方に「HANAYASURI」をお渡ししたところ、「座禅を組んでいるような気持ちになりました」と、感想をいただいたことがあった。だからということでは無いのだけれども、一度、ザゼンソウを観に行きたいなと思っていた。

伊那谷は、ザゼンソウが自生する地域である。ミズバショウなどと同じサトイモ科の植物で、雪国に生育する。冬が終わる頃、芽を出すときに発熱し、周囲の雪を融かす。自生地は日本海側に多く、長野では北部の高原に多い。伊那谷は、自生地の南限とされる。

2月下旬。飯田市の天然記念物に指定されている「嵯峨坂のざぜん草自生地」を訪ねるため、伊那谷へと向かった。2月に伊那谷を訪ねるのは初めてで、中央道を走っていると、伊那山地の向こうに雪をかぶった南アルプスが、大きく、眺められた。

嵯峨坂のざぜん草自生地は、飯田市虎岩という地域にある。虎岩は、和紙の里がある下久堅の隣の地域。飯田山本から三遠南信自動車道に入り、久堅インターで下りる。県道83号を右折。そのまま進むと喬木村第二小学校があり、もう少し先に行くと九十九谷森林公園がある。遠山郷に行くならば、途中で折れて、山道を進む。何度も来ているので、だいぶこの辺りの道を覚えてきた。右折して少し行くと、縄文時代の竪穴住居が復元されている北田遺跡があり、すぐに「嵯峨坂ざぜん草自生地」の道標があった。道標の方に折れる。山沿いの道をしばらく進み、谷あいの棚田に沿って急坂を上がる。目的地に到着。

棚田沿いには砂利の敷かれた駐車場があり、イスとテーブルが置かれた休憩所もある。置いてあったパンフレットをもらい、自生地を目指す。自生地は、もう少し上ったところにあるようだ。林縁の坂道を歩くと、周辺の植物を楽しめるようにされていて、植物の名前が書かれた札が立ててあった。「山葵沢」という札があったが、ワサビも生えるのだろうか。

白い枯れ草がおおう湿地沿いを林の端まで上ると、ここから、ざぜん草自生地。林床の湿地に、木道と物流に使うプラスチックのパレットが敷かれている。パレットは歩きやすかったが、木道は年季が入っていた。ザゼンソウが出ていないか、注意深く、湿地に目を向ける。芽出しはあるが、仏炎苞は見つからない。どうやら来るのが早すぎたかなと諦めかけていたら、一つだけ瑞々しい仏炎苞が出ていた。周りに雪は無いが、湿った土と落ち葉の間から出たばかりのザゼンソウは、黄金色にも見える緑色だった。ほっとして、数枚写真を撮り、林を出る。湿地と棚田の先に山並みが見えた。ウグイスの声を聞きながら、しばらくの間、のんびりする。駐車場のハナノキの枝に、越冬明けのヒメアカホシテントウがいた。少し触ると、まだ重そうな足取りで、もぞもぞ下へと移動していった。

3月下旬。山本の湿地を訪ねたあと、虎岩のザゼンソウはどうなっただろうと思い、訪ねてみた。一カ月前とは違い、大きくなった赤茶色の仏炎苞が出ていた。頭を出しているものもあれば、ほとんど埋まっているものもある。座禅を組み始めたばかりの修行僧も、時間が経ち、禅師の風格。株数は、数十ほどだろうか。

めだか池ではメダカが泳ぎ、テーブルでは、ルリタテハが翅を広げていた。たまたま来ていた方に話しかけると、この自生地の管理をされている方々のお一人だった。立ち話をしていると、虎岩の文化財施設である旧瀧澤医院の管理人でもあるそうで、「よければ観て行きませんか」と言ってくださった。せっかくなので、お言葉に甘えて案内していただくことにする。旧瀧澤医院は、明治時代の医師である瀧澤清顕が建てた擬洋風建築の病院。瀧澤清顕は、当時から白内障の手術を多数手掛けるほど、医師としての腕はよく知られ、美濃、三河、遠江からも頼ってくる人がいた。それぞれの街道が通る伊那谷は、来るのにも適していただろう。現在は、全国からお医者さんが、興味をもって訪ねて来るそう。資料の調査が進めば、これからその人柄も含めて知られていくだろう。立派な石垣を組んでまで虎岩に病院を作った理由に、絶えず湧き出る泉の存在がある。下久堅に和紙の里ができたのも、水と地形が理由の一つにある。自然の恵みに着目した先人が多い地域なのだなと実感した。〈中に続く〉

 

 

「春の観察会」のお知らせ

美浜町での「春の観察会・黒山に登る」のお知らせです。昨秋に続き、町民の森での観察会です。この場所は、恋の水神社から1キロほど東にある雑木林で、小高い山(黒山、標高 68.5メートル)になっています。とても低い山ですが、晴れていれば、山頂から三河湾と伊勢湾を見ることが出来ます。恋の水神社を出発し、黒山山頂を目指しながら、周辺の春の様子を観察します。(写真は、11月撮影)

 

〇日程/2026年4月19日(日)

〇時間/13:30集合~15:30頃、終了予定 ※30分ほど延長することがあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/美浜町奥田・恋の水神社駐車場 地図はこちら

※自動車の場合は、「恋の水神社」駐車場にお越しください。知多半島道路「美浜IC」を出て5分ほどです。

※電車の場合は、最寄りが「知多奥田」駅になります。13:13着の列車でお越しいただけましたら迎えに行きますので、その旨お知らせください。駅からは車で5分ほどです。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に昼食をとられる方は、各自ご用意ください。トイレは、恋の水神社にあります。長い距離を歩きながらの観察となりますので、歩きやすい靴でお越しください。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

終了しました。ご参加いただきありがとうございました。

 

シエル・ブラン

歯医者からの帰り道。地下鉄の駅に向かって歩いていた。大通りの交差点では、お昼御飯を食べに行くのか、買いに行くのか、仕事着姿の人たちや近隣の大学生が信号待ちをしていた。見上げれば、高速道路の高架。近くには、改装中の国際会議場がある。この辺りは、気にしなければ、土も見つけられない都市部だが、街路樹の根元を見ると、銅板のツリーサークルの隙間にスミレが咲いていた。見るからに小さなスミレ。たぶん、ヒメスミレだろうと思い、近づいて確認する。葉の縁が軽く波打っている。距(きょ。花弁の中で前に垂れる唇弁の後方部分)を横から見ると、根元だけがややピンク色だが、白い。ヒメスミレで良さそうだ。ヒメスミレを最初に認識したのは、岩滑の八幡社の石垣だったなと思い出す。

毎年3月になると、「そろそろスミレが咲く時期だ」と、路傍に目がいく。今年も3月半ば頃から見かけるようになった。スミレは、とても種類が多い。それだけで分厚い図鑑ができるほどである。最初はどのスミレを見ても、同じように見える。スミレの花があることに気づけるようになると、今度は、どれも違う種のような気がしてくる。そうこうしながらも、毎年調べてきたからか、生活圏と観察場所で出会うスミレは、大体見分けられるようになってきた。覚えては忘れ、忘れては覚えてという繰り返しは、虫の音を覚えるのに似ている。

まず先に、有茎種(茎が地上に出ている)であるタチツボスミレの仲間だが、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、ニオイタチツボスミレは見かけている。だが、タチツボスミレの仲間は種間交雑が多いようなので、とりあえずタチツボスミレの仲間としておく。

地上茎の無い、無茎種のスミレの仲間では、春先、最初に見つけるのは、マキノスミレ。花は赤紫色で、距がピンク色になる。葉の裏や葉柄は、赤みがかっている。まだ昆虫が動き出す前から咲き出すものもある。東海地方は、マキノスミレとシハイスミレの分布が交わる場所とされているが、これまで歩いてきた観察地で見かけるのは、マキノスミレがほとんど。シハイスミレは、よく似ているが、葉の形が異なる。

濃紫色のスミレは、植物体の大きい順に、スミレ、ノジスミレ、ヒメスミレ。そのうち、スミレ、ノジスミレは、距も花弁と同じ濃い紫色をしているが、ヒメスミレは距が白い。スミレとノジスミレの違いは、葉を見ると分かりやすい。スミレには、葉柄に目立つ翼(よく。柄から張り出している部分)があるが、ノジスミレは無い、もしくは目立たない。スミレは道路端でも野路でも、一塊になって生えている印象がある。葉も大きく、立ち上がる。

白いスミレは、紫色のスミレに比べて、見かけることが少ないので、出会ったときのことを記してみる。まずは、フモトスミレ。観察を始めたばかりの頃、大谷の高砂山公園で見たのが最初だった。葉脈の白さが目立つ葉に、ピンクに色付いた距。雑木林の道沿いに点々と咲く小さな花を探して、下を向いて歩いた。春がやってくるごとに、フモトスミレのある雑木林は見つかり、今では数か所で確認している。武豊自然公園には、フモトスミレのほかにニョイスミレ(ツボスミレとも)も咲く。ほとんど歩く人のいない湿気のある坂道で、葉を繁らせて、小さな白い花を一斉に咲かせている。

名古屋市内では、西味鋺の新地蔵川沿いを歩いて、小学校側から慈恩橋を越えたあたりに、白いスミレがたくさん咲く。シロスミレという種があったなと思い調べてみたが、シロスミレは分布と生育地が、この路傍と一致しない。葉には翼があるので、スミレの白花というのがあるのかなと思っていたら、アリアケスミレに白花があるそうだ。スミレとアリアケスミレの違いは花の色なので、このスミレもアリアケスミレで良いだろう。熱田神宮にはヒゴスミレがある。5裂した葉が特徴。この花は、ここでしか見たことが無い。

すべてではないと思うが、知多半島、名古屋でよく見かけるスミレは、大体これくらい。淡紫色で、早春に人家の近くで咲くコスミレは、まだ見かけていない。

カモのいなくなった堀川を渡り、地下鉄に乗って、熱田神宮伝馬町駅で降りる。地上に上がり空を見ると、白かった。ほのかに水色が見える部分もあるが、ほぼ真っ白。空が白くても、白い雲が分かるのは、陰影があるから。当たり前と言えばそうなのだが、陰影があると立体的に見える。空が白いと、街路樹のコブシは目立たない、だいぶ散ってきた。そういえば、観察会をしている天白渓も「白い天(そら)」だなと思いついたところで、家に着いた。

翌朝、白かった空は暗く灰色の雲に覆われて、待望の雨が降っていた。