14号・トンボ その3

さまざまな場所で、シオカラトンボがよく見られた夏の時期が終わりはじめると「赤とんぼ」の季節になっていきます。

「赤とんぼ」と言われて思い浮かべるのは、アキアカネとナツアカネの2種ではないでしょうか。見た目はとても似ています。頭部や胸部まで赤く染まるのがナツアカネ(上の写真)。腹部だけ赤くなるのがアキアカネ(下の写真)です。ですが個体差があるので、正確に調べるには捕まえてみる必要があります。

夏にしばしば見られる「赤とんぼ」の多くは未成熟の個体で、黄色い体をしています。この時期は特徴である胸部の模様などが見やすいです。次の写真は、ナツアカネやアキアカネよりも少し小さな「赤とんぼ」です。

マイコアカネは複雑な虎柄模様の胸部をしています。多くのトンボはこの部分に特徴が現れるので、図鑑をよく見てみる必要があります。

マユタテアカネは、胸部の模様がうすいです。

ほかにも、小さい「赤とんぼ」には、ヒメアカネなどがいます。

コノシメトンボは、ナツアカネやアキアカネと近いサイズの「赤とんぼ」です。マイコアカネに模様の雰囲気が似ていますが、翅の先端に黒斑が入ります。

これらのトンボは秋にかけて成熟し、赤い体になります。

「赤とんぼ」といえば、地域によってはこの種を指すのが、ウスバキトンボです。夏から秋にかけて群れて飛んでいるのを見かけますが、なかなか止まりません。多くは黄色い体をしていますが、腹部を赤くする個体もあり、ナツアカネやアキアカネと大きさもよく似ています。特徴は、胸部の模様がほとんどないこと、翅のふちに入る小さな四角い斑が黄色いことです。上の写真は全身が黄色、下の写真は腹部が赤みを帯びています。

「赤とんぼ」の種類はこのほかにもたくさんいます。また、ショウジョウトンボは一年を通じてよく見られる赤いトンボです。種の見分け方、雌雄の違い、生息場所など、より詳しく知りたい方は、ぜひ図鑑で調べてみてください。

 

 

14号・トンボ その2

トンボの季節は続きます。街中などでも見かける青いトンボを紹介します。

もっともよく見かけるのはシオカラトンボ。全体的に青く胸部に黒条が入ります。街中でもふと近くに止まるトンボがいるとシオカラトンボのことが多いです。人懐っこく鞄や服に止まることもあります。メスは全体的に黄色っぽい体です。ムギワラトンボとも呼ばれ、上から見たときの腹部の麦わら模様が特徴的です。

たまに、メスとオスの模様が混ざったシオカラトンボも目にします。

目の前を横切ると、シオカラトンボかな、と思うのですが、少し小さい青いトンボはハラビロトンボ。シオカラトンボより小さく腹部が幅広です。胸部、頭部は一見真っ黒ですので、見慣れるとすぐにわかります。田のある場所で普通に見られます。街中では公園の水辺などで見かけることがあります。

シオカラトンボよりも少し大きい青いトンボはオオシオカラトンボ。二種が近い場所で飛んでいるとその差がわかりやすいです。胸部まで青く、頭部が真っ黒に見えます。

写真だと大きさはわかりにくいので、興味がある方は実際に探して確かめてみてください。トンボの行動は眺めているだけでも複雑で自分なりのトンボのくせを見つけると、おもしろいかもしれません。

 

15号・セミ

現在配布中の「HANAYASURI 15」ではセミについてエッセイを書いています。関連してセミのさまざまな時期の写真を紹介します。

セミは木の枝に卵を産み付けます。写真のささくれはセミの卵があるしるしです。ささくれの奥にひとつずつ小さな卵が入っています。

土の中で育ったセミが地上に出てくるところです。

セミは羽化するための場所を探してゆっくりゆっくり地上を歩きます。夜、行動をはじめることがほとんどです。写真では太陽の光があたったせいか、目が赤く見えます。

枝や葉などに止まった幼虫は時間をかけて羽化します。背中を割って体を少しずつ殻の外に出します。上半身をすべて出し終えると、頭が下にぶらんとなっています。そこから体を起こして殻のあたまに前足をひっかけ全身を外に出します。透明な翅のクマゼミは羽化したときから透きとおる翅ですが、翅の茶色いアブラゼミは羽化したては白い翅です。

翅が乾いてくると、少しずつ止まっている場所から歩いて移動し、ある瞬間、飛び立ちます。そして夏の短い期間を必死で生き抜きます。

同じ日本でも、場所によって、季節によって身近なセミは違います。セミについて書かれた本はたくさん出版されていますので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

14号・トンボ

「HANAYASURI」14号では、トンボについて文章を書いています。関連して写真の掲載できなかったトンボをいくつか紹介します。

表紙でハスの葉に止まっていたのはトンボ科のチョウトンボ。濃藍色でかがやく翅の形は特徴的で、ひらひらと前翅と後翅を交互にはばたかせます。都市部の公園でもしばしば見られます。

ハグロトンボはカワトンボ科のなかでは身近です。黒い翅も特徴的ですが明るい翠色の胴体には光沢があり、きらりと光って見えます。

均翅亜目モノサシトンボ科のモノサシトンボ。名前の由来は胴の節にある環状紋が定規に似ていることから。全長はイトトンボ科のトンボよりも一回り大きいです。

イトトンボ科のセスジイトトンボ。イトトンボの仲間は頭部にある眼後紋と、胸部の模様が、見分けるひとつのポイントになりますが、セスジイトトンボは眼後紋が三角形で胸部の黒条のなかに淡い色の線がはいる個体が多いのが特徴です。

こちらもイトトンボ科のホソミイトトンボ。その名の通り腹部が細長いです。眼後紋がつながっているのが特徴です。

オレンジ色のイトトンボ。これはイトトンボ科のアジアイトトンボの未成熟個体です。イトトンボの仲間の未成熟個体にはオレンジ色をしたものがあります。トンボは雌雄のほかにも、季節型、そして未成熟か成熟かで体の色などが変わります。興味がある方は、ぜひ図鑑で身近なトンボを調べてみてください。

14号・一枚の写真

「HANAYASURI」14号の一枚の写真。写真に隠れているのはジャノメチョウ科のキマダラヒカゲです。キマダラヒカゲはサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲがあり、写真は前者。ジャノメチョウの仲間は翅の裏に目玉のような模様(眼状紋)があることが特徴。種によって位置や数が異なります。サトキマダラヒカゲは市街地などにも現れ、神社などの樹液を吸うため木の周りでよく見かけます。翅を開かずに止まっていると、木肌に紛れることがよく分かります。

 

12号・クサカゲロウ

「HANAYASURI」12号で紹介したクサカゲロウです。クサカゲロウはアミメカゲロウ目クサカゲロウ科昆虫の総称。ふわふわと飛んでいる姿は繊細な雰囲気ですが、捕まえるととても臭い。臭いからクサカゲロウ(臭いにおいを出さない種もあります)。家の天井や木の葉の陰、枯れ葉などに産み付けられた複数の白い小さなたまごは優曇華(うどんげ)の花と呼ばれます。

13号・二枚の写真

現在配布中の「HANAYASURI」13号の二枚の写真。タンポポの花の上で何かを探しているのは成虫になる前のヤブキリ。大きく写っていますが体長は約2センチ。よく目を凝らすと、さらに小さな虫が花びらの陰に写っています。丸い目のちょっととぼけた表情でヤブキリを見上げる様子は、見つかった!と焦っているようにも見えます。