カラスウリの花は昼間咲いていない。くたっと閉じて、レースをまとった花弁もくるまっている。夜になると徐々に白い花が開き幻想的な表情を見せる。カラスウリの花粉媒介者(ポリネーター)は口吻の長いスズメガの仲間。夜に花を咲かせる種のポリネーターは、決まっていることが多い。秋、カラスウリの橙色の実がいくつもつるから垂れさがる姿も趣深い。
投稿者「sochit」のアーカイブ
ミソハギ
地域によっては盆花に欠かせないミソハギ。穂状に咲く紫色の花は7月ごろから少しずつ咲きはじめ、8月に入ると咲きそろう。漢字では「禊萩」。お盆に帰省する精霊を迎えるために身を清めるための花ということだろうか。お盆は地域によって時期も風習も違うので、お供えに使われる花もそれぞれ違うのだろう。
14号・トンボ その2
トンボの季節は続きます。街中などでも見かける青いトンボを紹介します。
もっともよく見かけるのはシオカラトンボ。全体的に青く胸部に黒条が入ります。街中でもふと近くに止まるトンボがいるとシオカラトンボのことが多いです。人懐っこく鞄や服に止まることもあります。メスは全体的に黄色っぽい体です。ムギワラトンボとも呼ばれ、上から見たときの腹部の麦わら模様が特徴的です。
たまに、メスとオスの模様が混ざったシオカラトンボも目にします。
目の前を横切ると、シオカラトンボかな、と思うのですが、少し小さい青いトンボはハラビロトンボ。シオカラトンボより小さく腹部が幅広です。胸部、頭部は一見真っ黒ですので、見慣れるとすぐにわかります。田のある場所で普通に見られます。街中では公園の水辺などで見かけることがあります。
シオカラトンボよりも少し大きい青いトンボはオオシオカラトンボ。二種が近い場所で飛んでいるとその差がわかりやすいです。胸部まで青く、頭部が真っ黒に見えます。
写真だと大きさはわかりにくいので、興味がある方は実際に探して確かめてみてください。トンボの行動は眺めているだけでも複雑で自分なりのトンボのくせを見つけると、おもしろいかもしれません。
15号・セミ
現在配布中の「HANAYASURI 15」ではセミについてエッセイを書いています。関連してセミのさまざまな時期の写真を紹介します。
セミは木の枝に卵を産み付けます。写真のささくれはセミの卵があるしるしです。ささくれの奥にひとつずつ小さな卵が入っています。
土の中で育ったセミが地上に出てくるところです。
セミは羽化するための場所を探してゆっくりゆっくり地上を歩きます。夜、行動をはじめることがほとんどです。写真では太陽の光があたったせいか、目が赤く見えます。
枝や葉などに止まった幼虫は時間をかけて羽化します。背中を割って体を少しずつ殻の外に出します。上半身をすべて出し終えると、頭が下にぶらんとなっています。そこから体を起こして殻のあたまに前足をひっかけ全身を外に出します。透明な翅のクマゼミは羽化したときから透きとおる翅ですが、翅の茶色いアブラゼミは羽化したては白い翅です。
翅が乾いてくると、少しずつ止まっている場所から歩いて移動し、ある瞬間、飛び立ちます。そして夏の短い期間を必死で生き抜きます。
同じ日本でも、場所によって、季節によって身近なセミは違います。セミについて書かれた本はたくさん出版されていますので、興味がある方はぜひ調べてみてください。
ヤブラン
神社や公園に植えられているのをよく見るが、路傍でも見かける。初夏、濃緑の葉のあいだから短い花茎が伸びる。紫のつぼみがぽつぽつと付いている姿はかわいらしい。夏から秋にかけて花茎を伸ばしつぼみが開く。紫色の穂状の花は歩いていてよく目にとまる。ランとあるがラン科ではなくキジカクシ科。白花もまれに見かける。
トウバナ
シソ科の野草。春から夏にかけて、湿った土面などで見かける。茎から輪状に花序を出して(輪生)、小さなうす紅色の花を咲かせる。とても小さいので気にしていないとなかなか目に留まらないが、一か所に群生している。すっくと茎を伸ばし花をたくさん咲かせていると辺りを照らす灯台のようにも見える。
キリギリスの鳴く音
キリギリス。一般的によく知られる身近な直翅目昆虫。夏頃、田畑の脇の草陰や草むらなどで鳴く音をよく耳にする。「チョン」という短い音のあと「ギー」と長い音を出す。機織虫という名で和歌や古典文学にも登場する。
キバナコスモス
服が半袖の頃に咲き始め、コートが必要になってくる時期まで咲いている。街路や分離帯、公園、田畑などで一面キバナコスモスという場所もあり一度見たら忘れない。いわゆるコスモス(秋桜)は、種としてはオオハルシャギクを指す。キバナコスモスは別種でオレンジや黄色の花を咲かせる。大正時代に日本に入ったが、コスモスが詩歌やポピュラー音楽に愛されるのに対し、キバナコスモスが取り上げられたものは思いつかない。
ヒメヒオウギズイセン
初夏になると、濃いオレンジ色のうつむいた花をそこここで見かける。アヤメ科のヒメヒオウギズイセン。南アフリカ原産で、明治時代に入ってきた当初の名前モントブレチア、クロコスミアとも呼ばれる。路傍、畑の一隅、草地などさまざまな場所に逸出し街中でも見かける。花は穂の下側から順番に咲いていく。いくつか頭のうえにつぼみが残っている頃が、一番きれいな気がする。
ハゼラン
スベリヒユ科。5月から6月にかけて、よく分岐した細長い茎の先に赤い球体をつけた草を路傍で見かける。夏になると5花弁の1センチに満たない赤紫色の花を咲かせる。赤い実と紫の花が入り混じる様子は華やかで、花火にも見立てられたとか。もともと西インド諸島の原産で明治時代に観賞目的で入ってきた。いまは逸出し道端や放置され鬱蒼とした花壇などを華やかにする。