クズ

秋の七草に数えられるクズ。よく茂って鉄道の法面やフェンスなどを広く覆い、夏から秋にかけて大柄な赤紫色の花を咲かせる。根からつくられるくず粉は、くずきりやくずもちの原料。暑さをしのぐ涼し気な食べものとなる。クズの花が終わるころ、葉の陰で鳴く虫たちが翅を震わせ、きれいな音を月夜に響かせる。

キツネノマゴ

キツネノマゴ科。夏場、草むらをよく見るとぺろんと舌を出したような赤紫色の花を見かける。とても小さいので見過ごしがちだが、群生する場所では赤紫色が草の上で点点としてきれい。名前の由来はわかっていないが、「狐の馬子」だとしたら馬子に化けた狐が、荷物をもって逃げる時に「あっかんべー」をしている姿から来たのかもしれない。

カラスウリ

カラスウリの花は昼間咲いていない。くたっと閉じて、レースをまとった花弁もくるまっている。夜になると徐々に白い花が開き幻想的な表情を見せる。カラスウリの花粉媒介者(ポリネーター)は口吻の長いスズメガの仲間。夜に花を咲かせる種のポリネーターは、決まっていることが多い。秋、カラスウリの橙色の実がいくつもつるから垂れさがる姿も趣深い。

ミソハギ

地域によっては盆花に欠かせないミソハギ。穂状に咲く紫色の花は7月ごろから少しずつ咲きはじめ、8月に入ると咲きそろう。漢字では「禊萩」。お盆に帰省する精霊を迎えるために身を清めるための花ということだろうか。お盆は地域によって時期も風習も違うので、お供えに使われる花もそれぞれ違うのだろう。

ヤブラン

神社や公園に植えられているのをよく見るが、路傍でも見かける。初夏、濃緑の葉のあいだから短い花茎が伸びる。紫のつぼみがぽつぽつと付いている姿はかわいらしい。夏から秋にかけて花茎を伸ばしつぼみが開く。紫色の穂状の花は歩いていてよく目にとまる。ランとあるがラン科ではなくキジカクシ科。白花もまれに見かける。

トウバナ

シソ科の野草。春から夏にかけて、湿った土面などで見かける。茎から輪状に花序を出して(輪生)、小さなうす紅色の花を咲かせる。とても小さいので気にしていないとなかなか目に留まらないが、一か所に群生している。すっくと茎を伸ばし花をたくさん咲かせていると辺りを照らす灯台のようにも見える。

キバナコスモス

服が半袖の頃に咲き始め、コートが必要になってくる時期まで咲いている。街路や分離帯、公園、田畑などで一面キバナコスモスという場所もあり一度見たら忘れない。いわゆるコスモス(秋桜)は、種としてはオオハルシャギクを指す。キバナコスモスは別種でオレンジや黄色の花を咲かせる。大正時代に日本に入ったが、コスモスが詩歌やポピュラー音楽に愛されるのに対し、キバナコスモスが取り上げられたものは思いつかない。

ヒメヒオウギズイセン

初夏になると、濃いオレンジ色のうつむいた花をそこここで見かける。アヤメ科のヒメヒオウギズイセン。南アフリカ原産で、明治時代に入ってきた当初の名前モントブレチア、クロコスミアとも呼ばれる。路傍、畑の一隅、草地などさまざまな場所に逸出し街中でも見かける。花は穂の下側から順番に咲いていく。いくつか頭のうえにつぼみが残っている頃が、一番きれいな気がする。

ハゼラン

スベリヒユ科。5月から6月にかけて、よく分岐した細長い茎の先に赤い球体をつけた草を路傍で見かける。夏になると5花弁の1センチに満たない赤紫色の花を咲かせる。赤い実と紫の花が入り混じる様子は華やかで、花火にも見立てられたとか。もともと西インド諸島の原産で明治時代に観賞目的で入ってきた。いまは逸出し道端や放置され鬱蒼とした花壇などを華やかにする。

シチヘンゲ

庭先、神社の隅、公園、霊園などで小さなピンクと白の花の塊をよく見かける。クマツヅラ科の低木。属名のランタナで呼ばれることが多い。観賞用に栽培されたものがさまざまな場所に逸出している。花期は長く、一度覚えると、ここにもあそこにもとよく見かける。街中のチョウはこの花が好きである。いくつも咲いた花を行き来し、しきりと吸蜜しているときは、こちらが近づいてもあまり気にしない。