写真展「知多半島をめぐる」のお知らせ

来年1月に開催する写真展のお知らせです。2024年5月から10月に撮影した写真から選んだ30点を展示します。会期中は、毎日ギャラリーにおりますので、お時間がございましたら、是非お立ち寄りください。ご来場を心よりお待ちしております。

〈開催概要〉

相地透写真展「知多半島をめぐる GO AROUND THE PEN.―from SUMMER to AUTUMN in 2024」

2025年1月24日(金)~28日(火)

11:00 OPEN/18:00 CLOSE

会場:ガルリ ラペ 名古屋市昭和区高峯町143-15

https://www.g-lapaix.com/

[ギャラリーへの行き方]〇地下鉄でお越しの場合、名城線「八事日赤」下車後、2番出口を出て頂き、「八事日赤病院北」交差点を東山タワーが見える方向へ進んでください。スーパーマーケット「FEEL」を越えた次の区画、道沿いの左手にあります。〇バスでお越しの場合、「妙見町」が最寄りです。下車後、「FEEL」を左手に進んでください。〇駐車スペースは3台分ございます。近隣にコインパーキングがございますので、ご利用ください。

地図はこちら

 

SCENE in the pen. 080

“Red berries of Japanese roses”

Winter is the season when the berries of the grass and trees stand out in the field. Japanese roses had white flowers in summer. Now they are glowing their red berries in the winter afternoon light. Their colors are bright and beautiful.  [DECEMBER 2024]

夏に白い花を咲かせるノイバラの仲間には、ノイバラ、テリハノイバラ、ミヤコイバラなどがあります。この実は、ミヤコイバラ。実と托葉の形で見分けます。

 

はなやすり出版文化を考える会(12/22)

12月22日(日)の「はなやすり出版文化を考える会」について、お知らせです。

第五回となる今回の内容は、

〇題目1「文学者を知る16~20」
〇題目2「和紙産業と出版活動 その2」
〇題目3「2025年の本会について」

と題し、考えます。

題目1で取り上げる文学者は、重要文学者一覧(下記、PDFをご覧ください)をご確認ください。今回は、「熊谷守一」「入江泰吉」「星野富弘」「佐藤忠良」「甲斐信枝」の5人を取り上げます。初めての方は、第二回、第三回、第四回のまとめの記事内に、「文学者を知る1~15」の資料がありますので、ご覧ください。

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第四回のまとめはこちら

第三回のまとめはこちら

第二回のまとめはこちら

題目2では、前回に引き続き「和紙」について考えます。具体的には、いくつかの和紙生産地の特色を資料にまとめて、それをもとにお話します。また、和紙に関するさまざまな話題を、自由に話し合いながら、アイデアを出していきます。

来年2月に名古屋国際会議場が長期休館に入るため、本会場での「出版文化を考える会」は一旦、お休みします。題目3では、新しい会場の候補地など、2025年の本会について話し合います。

 

<会場>

名古屋国際会議場 会議室433

会場のホームページはこちら

<日時>

2024年12月22日(日) 13:15開始 16:30終了 ※途中、休憩を入れます。

<参加資格>

①1977年1月1日以降生まれの方

②出版に関する知識は、まずは必要ありません。豊富な知識よりも出版について興味・関心があり、ご自身の様々な体験を通した経験をもとに、話し合いに参加できる方を歓迎します。話し合いに参加して、今、取り組んでいる活動や、携わっている仕事に活かしたい方、出版社がつくられていく過程を目の当たりに出来るという稀な機会を一緒に楽しみながら考えたい方も、ぜひお越しください。

<参加費用>

1,500円(会場費、資料費等に使用します)

<定員>

15名

<懇親会>

終了後、懇親会を予定しています(17:30~19:00、場所:コメダ珈琲店)。お気軽にご参加ください。

 

参加のお申し込みはこちら

 

これでよいの塩梅

12月に入った。10月から11月にかけて、さまざまな場所を訪問し、開催する行事も多かった。そんな慌ただしい日々の中でも、楽しい出会いがたくさんがあり、考えることに追われていながらも、充実感があって、今年のハイライトと思える二カ月間だった。

エッセイを書こうと思いながら、なかなか、まとまらずにいる。なので、なんとなく考えていることを、トレースしながら、そのまま、今年最後のエッセイにしようと思う。

少し前のことだが、ぼんやりと、こんなことを考えた。「『でんでんむしのかなしみ』のカタツムリが、ナメクジと出会ったら、どう思うだろう」。「でんでんむしのかなしみ」は、新美南吉が書いた幼年童話の一つ。一匹のカタツムリが、自分の背負っている殻には、悲しみが詰まっていることを知り、どうしたらよいか考える。友だちのカタツムリに、私は不幸せですと話すと、友だちは、私の背中にもいっぱいだと言う。別の友だちにも聞いていくが、同じ答えが返ってくる。そして気づく。悲しみは誰でも持っていて、私は自分の悲しみを堪えていかなくてはいけない。カタツムリは、不幸を嘆くことをやめる。

数年前、ある自然史博物館を訪ねた時に、陸生貝類についての展示があった。陸生貝類は、カタツムリやキセルガイなどが知られるが、ナメクジも陸生貝類に入る。解説をよく読んでいくと、イメージと異なり、ナメクジは、カタツムリより原始的な生物ではなくて、進化した生物と書いてあった。殻のなかにあった器官を体の方へと移し、殻に隠れることができるメリットよりも、背負わないメリットを追求し、殻を背負わずとも生きていけるようになったのがナメクジ、というような内容だったと思う。

おぼろげな記憶を思い出しながら、こんなことも考えた。「でんでんむしのかなしみ」のカタツムリに、ナメクジは、こう言うのではないか。「わたしはもうかなしみをせおうのをやめました。あなたもそうしたらどうですか」。

なんとなく糸口が生まれたので、その先のカタツムリとナメクジの対話を想像し始めたのだが、それ以上、考えるのはやめた。なぜかというと、自分なりの結論が、もう出ていることに気づいたからである。私が考えるカタツムリは、この後、どのような対話をナメクジと展開したとしても、悲しみを背負うことをやめない。なぜかと問われたら、上手く説明することは難しいのだけれど、たぶん、やめない。

進化は身の回りの環境に適応して、世代交代し続ける可能性をより高めることを目指すものだと思う。ナメクジは、身を軽くし、どのような場所にでも入っていけるように体を作り替えた。大きな、重たい殻を背負わず行動するさまは、カタツムリであった頃よりも、スマートになったと言えるかもしれない。カタツムリは、天敵がやってきたら、背負っている殻の中に隠れることができる。けれども、そこに詰まっているのは悲しみ。悲しみのなかに身を隠し、じっと過ぎ去るのを待つカタツムリよりも、自分を取り巻く環境に適応して、賢く動き回るナメクジの方が、周囲の危険と対峙する力があるようにも見える。

ナメクジの言葉を聞いたら、カタツムリは思うだろう。「自分もスマートになれたらどんなにいいだろう。私の背負っている殻は重いし、中には悲しみが詰まっているのだから」。だが一方で、こうも考える。「しかし、みんなが悲しみを背負うことをやめてしまったら、世の中に生まれる悲しみは、誰が背負うのだろう?」。カタツムリは考え続けるが、結論は出ない。進化を選んだら、再び戻ることはできない。生物の進化は不可逆。一度下ろした殻を再び背負うことは、できない。

ここまで書いてみて、いよいよ何かを言いたいような文章の流れになってきたので、この辺りでやめようと思う。この話もまた、よくある言葉遊びである。

さて、年内にまだ訪ねる場所、大事な会が、いくつか残っているが、そうしているうちに今年も大晦日を迎えるだろう。来年、2025年は、今世紀が始まり、四分の一が経過する節目の年。来年もまた、身近な自然をよく観察して、文学者・表現者たちが書き記してきた文章をよく考えながら、自分の為すべきことに、丁寧に取り組んでいこうと思う。

一年間、エッセイを読んでくださり、ありがとうございました。少し早いですが、みなさま、お身体に気をつけて、良い年末年始をお過ごしください。

 

 

「知多半島をめぐる」写真販売

本日より4週間の期間限定で「知多半島をめぐる」の写真を販売します。次回写真展(2025年1月24~28日)後は、新しい写真の販売となりますので、この機会に是非、購入をご検討いただけますと幸いです。

〇販売期間/2024年11月22日(金)~2024年12月20日(金) ※終了しました。

〇販売内容/「知多半島をめぐる 2022冬~2024春」の写真、全120点

〇写真仕様/B4 正寸(257mm × 364mm)・インクジェット印刷・竹和紙

〇写真代金/1点につき、13,000円(プリントのみ)

〇額を購入される場合/1点につき、5,500円

〇送料/プリントのみ1点の場合、840円 額装1点の場合、1,270円 ※定形外郵便+簡易書留の料金となります。2点以上ご注文される場合は、注文確認メールでお知らせします。

〇備考/期間中はプリント枚数を制限せずに販売します。お届け時に同梱する販売証明書は、大切に保管してください。

 

―ご注文からお届けまで—

①「ポートフォリオ」内「NEW PHOTOS 2024 vol.1~3」より写真をお選びいただき、フォームよりご注文ください。

ポートフォリオはこちら

②フォーム送信後、数日以内に書肆花鑢より注文確認メールを送らせて頂きます。

③メールが届きましたら、注文内容に間違いが無いかご確認いただき、指定の振込口座に代金をお支払いください。

④お振込み後、注文確認メールに、発送先ご住所とお電話番号をご返信ください。

⑤販売期間終了後、制作します。写真のお届けは、来年1月下旬になります。

 

「冬の観察会」のお知らせ

年内最後の観察会のお知らせです。毎年12月に開催する「冬の観察会」は、これまで大谷、蒲池、大井、植大と毎年場所を変えて冬の野の様子を観察しています。今年は、美浜町・奥田の田んぼ周辺を歩いて、木の実や花を探します。また、この場所は、2025年最初の観察会「アカガエルのたまごをみる」の開催地でもあります。田んぼ周辺を観察しながら、アカガエルの冬眠についても考えます。(写真はマンリョウの実。12月撮影)

〇日程/2024年12月8日(日)

〇時間/13:30集合~15:30頃、終了予定 ※場合によっては30分ほど延長することもあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/美浜町・恋の水神社駐車場 地図はこちら

※自動車の場合は、「恋の水神社」駐車場にお越しください。知多半島道路「美浜IC」を出て5分ほどです。電車の場合は、最寄りが「知多奥田」駅になります。13:13着の列車でお越しいただけましたら迎えに行きますので、その旨お知らせください。駅からは車で3分ほどです。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に、昼食をとられる方は、各自ご用意ください。トイレは神社にあります。田んぼ道を歩きますので、汚れてもよい歩きやすい靴でお越しください。寒さが予想されますので、防寒対策をお願いします。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

終了しました。ご参加いただきありがとうございました。

 

写真販売のお知らせ

来年、1月24日(金)より5日間、名古屋市昭和区の「ガルリ ラペ」にて、写真展を開催します。展示する写真はまだ決まっていませんが、すべて未発表のもので構成する予定です。

写真展に先立ち、11月22日(金)よりポートフォリオ掲載の写真を販売します。対象は、ポートフォリオに掲載している「NEW PHOTOS 2024 VOL.1~3」の写真全点です。注文方法と販売までの流れにつきましては、8日(金)終了の「知多半島をめぐる―序―」の注文販売のページをご参照ください。期間は年内、12月20日(金)までを予定しています。

相地透「ポートフォリオ」はこちら

「知多半島をめぐる―序―」の注文販売(参考)

写真展後は、新しい写真の販売となりますので、この機会に購入をご検討いただけますと幸いです。お問い合わせは、「お問い合わせフォーム」よりご連絡いただくか、mail(at)hanayasuribooks.com(相地透宛)にお願い致します。

 

三つの琅玕(下)

かつて東京に琅玕洞という画廊があった。つくったのは彫刻家である高村光太郎で、実弟が経営した。日本で初めての近代的な商業画廊だったが、経営が上手く行かず一年で閉店。しかし、実際には経営者と場所が替わり、20年以上存続していた。そして、経営が移って以降、より深く関わった芸術家の一人が、碧南出身の工芸家・藤井達吉である。

10月の終わり。瀬戸市で、ある現代美術のイベントがあり、藤井達吉の「無風庵」が公開されていると知り、観に行った。無風庵は小原村から移築された工房である。急な坂を上った小高い山の上に、茅葺きの庵はあった。縁側から覗くと、六畳間が二つつながっていて、片方の畳は外され、美術家によって、珪砂の山が築かれていた。部屋に上がる。天井はきれいな竹組で、奥の小さなふすまに、藤井達吉の墨画を見つけた。一枚は、野山の風景。あとの二枚は、野の花。花の一つは、キク科の花の綿毛だろうか。もう一枚は考えてみるが分からない。少し褪せてはいたが、素朴な絵で楽しい。土間の展示ケースには、きのこの掛け軸、七宝焼き、陶器の皿、花瓶、達吉が実際に使っていた画具が飾られていた。展示スタッフの方に聞くと、普段は一般公開されていないため、地元の方も訪ねてきているそうだが、藤井達吉の名は、よく知られている、ということでは無さそうだ。

瀬戸に行く前に、碧南市にある藤井達吉現代美術館を訪ねた。今年に入ってから、2回目の訪問。地元の秋祭りと重なって、美術館付近の道は、人でにぎわっていた。入館無料の日だったからか、館内も前回来たときより人の数が多い。2階の企画展示「没後100年 富岡鉄斎」を観覧して、1階に下りてくる。階段下では、藤井達吉翁像が笑顔で座っている。最奥の展示室に入ると、藤井達吉の年表が掲げてあり、作品が展示されていた。

コレクション展示は、第3期で、展示テーマは「自然へのまなざし」だった。一点ずつ、ゆっくり観ていく。森に生える羊歯の様子を描いた屏風絵「ぜんまい」。雑木林の林床には、シダがよく茂っているところがある。近くに小川があり、湿気があるような場所では、オシダの葉がこの絵のような様子で生えている。人が歩きやすい道よりも、少し森に踏み入ったところ。この絵のモデルとなった場所も、あまり人が立ち入らない森の中と思えるが、森に行くのが好きだったのだろうか。

知人の茶室の天井画として描かれた草木の花。全部で36枚あるが、そのうち5枚が展示されていた。春に来館したときに購入した「藤井達吉の全貌」展図録(2013)によると、植物図鑑と照らし合わせて、一点一点、植物の名前を調べ、だいぶ種名が判明したそうだ。そのうちの一枚、印象的な青い花のシラネアオイは、美術館のモニュメントとしても使用されることになった。よく目を惹く、素敵な図柄だと思う。

「羊歯文書棚」と題された棚も、おもしろい。高さが1メートル、幅が40センチ、奥行きが70センチほどの木の書棚全体をシダが包んでいる。眺めていると、シダの葉の統一された模様に目が離せなくなる。シダの葉が備える形体の美は、写真を撮っていても、楽しい。雑木林を観察していると、花の重なり合いや木の枝の絡み合いなど、偶然の美、規則的な並びでは無い部分に、美を感じることが多いのだが、シダは規則的である。そこに木々の間からこぼれた光があたると、また、美しい。規則的な美は、人工物だけの領分ではなく、自然の中にも整った美があることを分かりやすく実感するのが、シダなのだ。

後日、「藤井達吉の全貌」に付属していた、自筆自叙伝「矢作堤」を読んだ。原本は1961年の大晦日から、62年の新春、そして同年2月に書かれた散文である。81歳の達吉が人生を振り返って、誤字も気にせず、筆の向くままに言葉を綴っている。最後の方では当時の社会や、科学の発展について、憂いをもった言葉が続いていた。

「人間が政事だ、宗教だ、芸術だ、化学だといっても、大したことはない。(中略)化学の最後は地球中の生物 植物を絶やす丈けだ、一片の小石を見ても、小草の実を見ても何という自然の力よ、」。化学と科学を分けて書いていないが、言葉は、同時代のレイチェル・カーソンと重なる。62年に「沈黙の春」は発表され、64年に「生と死の妙薬」という邦題で日本でも出版された。カーソンは、この年の4月に亡くなる。藤井達吉の没年月は、同年8月。偶然である。けれども、時代が危機に直面する時、同じような危惧を抱く人たちはいて、普遍的な事柄を感じられたなら、国は関係ないのだろう。そんなことを考えた。

 

 

三つの琅玕(上)

10月下旬の西味鋺観察会。この日は、矢田川河川敷で虫を捕る予定だったのだが、水辺の広場に到着すると、川の水量が減っていて、いつもは川の中を歩かないと行くことができない中洲が、ほとんど繋がっていた。小さい子でも、ちょっと手を貸せば、中洲に渡れる。なかなか無い機会なので、虫捕りから変更し、中洲を観察することにした。

中洲の縁の砂を踏むとゆるめで、足がずぶっと埋まるところもある。中央にいくと、いろいろな色の石が落ちている。上流の瀬戸から流れ着いた陶片も混じっている。荒れた環境だからか、花の大きさが極端に小さいツユクサがあったり、荒れ地に強いタデが数種類あったりと、中洲の様子を観察して歩く。子どもたちは、思いがけず、川の近くに来ることができたので、小魚の群れを思い思いにすくい上げていた。

下流に向かって中洲の先端まで歩いてくると、先にそちらにいた方が、「カワセミがいましたよ」と教えてくれた。カワセミは清流にいると思われることが多いが、市内でもよく見かける。熱田の近くでは、堀川沿いの貯木場跡によくあらわれる。冬がやってきて、水辺を飛ぶカワセミの羽が、きらっと光るのを見つけると、嬉しい。この日は、すぐに飛び去ったようで、残念ながら私は見つけることはできなかった。

さて、カワセミは、漢字では「翡翠」と書く。宝石の「翡翠(ひすい)」は、カワセミの羽の色に似ていることから名前が付けられているのだが、その中でもとりわけ美しいものは「琅玕(ろうかん)」と呼ばれる。なかなか普段、生活をしていて耳にする言葉ではないが、自然を見つめていた文学者や表現者の足跡を調べるなかで、最近、三つの琅玕と出会った。

一つ目は、中勘助の第一詩集。「琅玕」と題されたこの詩集を読んでいると、さまざまな自然の情景が浮かび上がる。中勘助は、海で、野山で、沼のほとりで、田畑で思索を巡らせる。花や虫や鳥であっても、それらのある風景であっても、出会ったことで、言葉にしたいほど心の琴線に触れた自然の姿は、それだけで自分だけの宝石になる。さらに、詩集にすれば、読んだ人とも、そんな美しい石の数々を共有することができる。

二つ目は、金子みすゞについて調べているとき。金子みすゞは、童謡・詩を書いた手帖を数冊、残して亡くなったが、残された手帖の一冊が「琅玕集」である。この中には自分の詩ではなく、金子みすゞ自身が雑誌を通して出会った、さまざまな詩人たちの詩が記されている。書籍化されている(「琅玕集(上・下)」JULA出版局/2005)ので、当時、金子みすゞが宝物のように大切にしていた、詩の数々を現在でも読むことができる。

11月に新美南吉記念館の童話の森で「鳴く虫の観察会」を開催することになり、資料に金子みすゞと巽聖歌の詩を載せることにした。自然によく親しみながら詩を書いていた二人。金子みすゞのコオロギは、昼の月を見て鳴いていたり、ネコに片方の脚をとられてしまったり。巽聖歌は、山から吹き下ろす風の中、鳴いている虫を詩にしている。また、「糸ぎりす」という虫が登場する詩が日記の中にあったので、こちらも載せた。糸ぎりすは、クビキリギスのことだろう。赤い口をしていて、強く噛む。それこそ糸を切るくらいかもしれない。詩に登場する糸ぎりすは、越冬から目覚めるが、農夫たちもまだいない荒れた畑で、食べものを探し、ゆっくりと歩いている。畑の様子を、丁寧に観察しているから生まれる詩だと思う。

新美南吉は二人とは歳が離れているが、金子みすゞと巽聖歌は、ほぼ同世代。みすゞの方が2つだけ年上である。同時期に雑誌に投稿していた二人だが、面識があったかは知られていない。ただ、みすゞは「琅玕集」に聖歌の詩「水口」を記していて、聖歌は日記の住所録に、みすゞの名前と仙崎の住所を記していた。会ったことはなくても、雑誌に掲載された詩を通して、お互いのまなざしに、魅かれあっていたのだろう。

戦争が終わり、聖歌は作品を託された南吉とともに、みすゞのことも気に掛けていた。1954年に聖歌が編集し刊行した「日本幼年童話全集」(河出書房)には、みすゞの詩が10編掲載されている。みすゞは、80年代以降になって、ようやく、稀有な詩人として知られるようになった。73年に逝去した聖歌が、それを知ることはなかったが、きっと亡くなるまで気に掛けていたのではないかと想像する。

同時代の文学者たちに寄り添い、本を編集し、また、詩の楽しさをまだ知らない人たちに伝え続けた巽聖歌。その生涯と人となりを、多くの人に知ってもらいたい。〈下に続く〉

 

 

「秋の観察会 in 小野浦」のお知らせ

春に続き、2回目となる美浜町・小野浦での観察会です。前回は雑木林を歩いて、春の草花と2つのため池を観察しました。今回は日本初の聖書和訳に関わった「山本音吉」が生まれ育った小野浦で、ゆかりの地を数か所巡ります。色づいてきた木の実や、秋の草花の様子も観察します。(写真はタンキリマメの実。10月撮影)

〇日程/2024年11月23日(土・祝)

〇時間/13:30集合~15:30頃、終了予定 ※場合によっては30分ほど延長することもあります。余裕をもってご参加ください。

〇集合場所/美浜町・まちの駅「食と健康の館」 地図はこちら

※自動車の場合は、「食と健康の館」駐車場にお越しください。常滑方面からは、国道247号(常滑街道)沿いに進み、野間崎灯台を過ぎて、1分ほどで着きます。電車の場合は、最寄りが「野間」駅になります。13:16着の電車(内海行き)でお越しいただけましたら迎えに行きますので、その旨お知らせください。駅からは車で6~7分ほどです。

〇費用/無料

〇その他/観察会の前に、昼食をとられる方は、各自ご用意ください。食と健康の館でも食事ができます。トイレは施設内にあります。少し長い距離(約2キロ)を歩きながらの観察となります。歩きやすい靴でお越しください。メモを取る場合は、筆記用具をご用意ください。

★予定の変更など/開催日の前に、予定の変更など、ご連絡をする事があります。その場合は、お申し込みいただいたメールアドレスにご連絡しますので、お手数ですが、当日の前に一度メールをご確認ください。よろしくお願い致します。

 

終了しました。ご参加いただきありがとうございました。