カネタタキの音

よく知られる鳴く虫は数多くいますが、わたしはこの音が聞こえると秋になったな、と感じます。チンチンチンチン……という鉦を叩くような音は街中でも聞こえてきます。街路樹や神社の樹のうえから。民家の庭先やビルの壁から。クズなどつる植物の繁茂する場所から。印象では、小学生くらいの子どもたちが真っ先に気がつく音のようです。ですが、音が小さいからか、高いからか、年齢とともに聞こえづらくなるようです。

 

 

8月も終盤になり、これから虫の音はよく聞こえる時期に入ります。地域によって異なりますが、9月に入り秋分頃までがもっとも虫たちは活発です。その後もしばらく聞くことができますが、この時期が一番よく音もとおりますので、気にかけてみてください。

クマコオロギの音

落ち着いたテンポでジィ、ジィ、ジィ、と短い音で鳴いています。印象としては、ほかのコオロギの仲間とくらべて耳に入りづらく、たくさん音が聞こえる場所では聞き逃してしまいます。録音は日没前、線路わきの草むらから聞こえた音です。

 

スズムシの音

秋の鳴く虫の代表格、スズムシ。子どもの頃に飼っていた方もいるかもしれません。リーンリーンと鈴を鳴らしたような音です。リーンリーンの前には、ふるえるようなためが入ります。鳴き方は時期や時間帯によって変わり、秋も深まってくると、音の響きがかすれてきます。都市部ではほとんど耳にしませんが、クズやススキなどの茂る場があれば聞こえるかもしれません。

 

カンタンの音

ルルルルルル……と連続音を響かせます。わりと大きな音で、ほかの虫と音色も異なるので、多くの虫がいる場所でもわかりやすいです。なかなか止まらないこともあり、知らないと虫の音と気づかないかもしれません。カンタンは緑の多い場所にいる印象があるかもしれませんが、街中でも聞くことができます。録音した場所は都市部の川沿いで、ヨモギが繁茂している場所です。

 

キンヒバリの音

キンヒバリはヒバリモドキ科の小さなコオロギ。田の畦や水辺など湿気のある地面から聞こえてきます。リッリッリッリッリッリーーー、という音はさほど大きくなく注意深く聞かないとわからないかもしれませんが、特徴のある音です。日没前から鳴いている印象なので、ほかの虫が鳴き始める前、夕暮れ時のほうが気づきやすいかもしれません。録音では金属音のように響いていますが、実際にはもう少しくぐもって聞こえると思います。

 

ヤブキリの音

キリギリス科のヤブキリ。初夏から秋にかけてシリリリリリッと鳴いています。コオロギの仲間とくらべて、キリギリスの仲間は聞き取りづらいかもしれません。草むらや田、街中でも草の繁茂する空き地などから聞こえます。録音は初夏の昼間に録ったものです。

 

ミツカドコオロギとハラオカメコオロギの音

街中でよく聞こえてくるコオロギ2種です。どちらも植え込みや草むらなどから聞こえてきます。聞き慣れないと、どちらだろうと思ってしまいます。印象としては、リリリリリの音が短く歯切れよいのがミツカドコオロギ。落ち着いたテンポで鳴くのがハラオカメコオロギです。聞き比べてみてください。

 

ミツカドコオロギ

 

ハラオカメコオロギ

マツムシの音

童謡でも「チンチロリン」の音でうたわれ、古くから親しまれているマツムシ。高く特徴のある音はわかりやすく、草むらなどから聞こえます。音の速さは時期や時刻などで変化します。また、一頭でゆっくり鳴いているときもあれば、数~十数頭で競い合ってさかんに鳴いているときもあります。街なかでは聞ける場所が減っていますが、競い合って鳴いている録音は都市部の国道沿いです。

 

 

競い合って鳴いている音

ツヅレサセコオロギの音

線路沿いの地面や、側溝などからリリリリリリ……と間断なく鳴いているコオロギ。街中でも聞くことができます。一定の速さで鳴き続け、一度鳴き止んでもすぐに鳴き始めるので切れ目がなかなかわかりません。ほかのコオロギの仲間とくらべると、群れずに単独で鳴いていることが多い印象です。

 

14号・トンボ その3

さまざまな場所で、シオカラトンボがよく見られた夏の時期が終わりはじめると「赤とんぼ」の季節になっていきます。

「赤とんぼ」と言われて思い浮かべるのは、アキアカネとナツアカネの2種ではないでしょうか。見た目はとても似ています。頭部や胸部まで赤く染まるのがナツアカネ(上の写真)。腹部だけ赤くなるのがアキアカネ(下の写真)です。ですが個体差があるので、正確に調べるには捕まえてみる必要があります。

夏にしばしば見られる「赤とんぼ」の多くは未成熟の個体で、黄色い体をしています。この時期は特徴である胸部の模様などが見やすいです。次の写真は、ナツアカネやアキアカネよりも少し小さな「赤とんぼ」です。

マイコアカネは複雑な虎柄模様の胸部をしています。多くのトンボはこの部分に特徴が現れるので、図鑑をよく見てみる必要があります。

マユタテアカネは、胸部の模様がうすいです。

ほかにも、小さい「赤とんぼ」には、ヒメアカネなどがいます。

コノシメトンボは、ナツアカネやアキアカネと近いサイズの「赤とんぼ」です。マイコアカネに模様の雰囲気が似ていますが、翅の先端に黒斑が入ります。

これらのトンボは秋にかけて成熟し、赤い体になります。

「赤とんぼ」といえば、地域によってはこの種を指すのが、ウスバキトンボです。夏から秋にかけて群れて飛んでいるのを見かけますが、なかなか止まりません。多くは黄色い体をしていますが、腹部を赤くする個体もあり、ナツアカネやアキアカネと大きさもよく似ています。特徴は、胸部の模様がほとんどないこと、翅のふちに入る小さな四角い斑が黄色いことです。上の写真は全身が黄色、下の写真は腹部が赤みを帯びています。

「赤とんぼ」の種類はこのほかにもたくさんいます。また、ショウジョウトンボは一年を通じてよく見られる赤いトンボです。種の見分け方、雌雄の違い、生息場所など、より詳しく知りたい方は、ぜひ図鑑で調べてみてください。