パンセ・コティディエンヌ 1、2

パンセは、パスカルの思索思想集「パンセ」でおなじみ、フランス語で「思考、考え」の意味。コティディエンヌは、「日常の」という意味の形容詞「コティディアン」の女性形。日本語に訳すと「日々の考え」というような意味合いになる。アルファベで綴ると「Pansée quotidienne」。「パンセ」は、一般的な広い意味での「思考、考え」なので、筋道を立てて、より深く考える場合は、「レフレクシォン(réflection)」ということばを使う。

どうして急にフランス語なのかというと、しばらく前からフランス語を勉強しているからである。10代後半から20代前半にかけて、やってみようと思っていたことは、これまで、自分なりに勉強したり、挑戦してみたのだが、やり残しているものの一つが、語学。

実用的なことを考えて、共通語にもなりつつある英語は、ちゃんと話せるようになった方が良いだろうと思ったこともあったのだが、どうも、自分に合わないことが分かってきた。なので、話すのはさておき、読解は文学部相応に取り組んでいたフランス語を、きちんと身につけてみようと思ったのである。そうはいっても、当時とはちがい、時間が豊富にあるわけではない。とりあえず、寝る前にラジオ講座を聞いたり、完全に忘れてしまっている単語を覚え直しているのだけれども、身に付いてきている実感は、まだない。

というわけで、そんな勉強も兼ねて、ことばにかぎらず、フランスやヨーロッパの自然や文化、人や歴史などについて、さまざま考えてみたことを、この「パンセ・コティディエンヌ」では、書いていけたらと思う。

ちなみに、「エッセイ」の語源は「エセ(essai)」で、「試みる」を意味する動詞、「エセイエ(essayer)」から生まれたことばである。

(1)日本人の自然観とヨーロッパ人の自然観はちがう、という話を耳にする。日本は、八百万の神ということばに象徴されるように、身近な自然物や自然現象に神性を見出したのに対し、キリスト教に代表される西洋の神は人格化されている、というのが、おおまかではあるが、根拠とされていることのようだ。日本は一年を通し、自然の変化が豊かである(であった、かもしれない)。和歌などの、ことばの表現が代表するように、そういった四季の美に心情を託し、日本人共通の美意識として、表現様式が継承されてきた文化である。

一方、西洋の文化は、人間の身体、精神にもとづくようだ。人間という存在そのものが、表現者の興味の対象であり、ギリシア・ローマ彫刻にしても、宗教画にしても、中心にあるのは、人が兼ね備える美である。哲学・思想の歴史は、それを象徴している。

ヨーロッパ人と日本人の自然観は、異なるものだろうか。というよりも、まず、ヨーロッパに暮らす人々は、自然をどのように見て、関わってきたのだろう。人の存在と対比するもの、だろうか。人の移動や人同士の争いが絶えず起こってきた地域を構成している、海や山、川や森、沼や湖。そういった環境に生きる、動物や昆虫や植物などと、どのように関わってきたのだろう。また、都市や農村などにあって、日々の生活で目にする生命や自然現象は、人々の心にどのような感情の変化をもたらすものなのだろう。

当たり前のようなことであっても、まずは、考えてみたい。科学者たちの並々ならぬ努力と追究の歴史の成果でもある、46億年の地球史をベースにして。文化、地理、文学、産業といった、人々の生活に近しいことがらなどから想い出し、私たちが暮らす身近な自然と重ね合わせて考え、その先に、東西を問わず普遍的な自然観が生まれてくるとよいな、と思う。

(2)モンテッソーリ教育の創始者であるマリア・モンテッソーリは「コスミック・タスク」ということばで自然や生態学から学ぶことの大切さを説明している。コスミック・タスクとは、地球上の生きものが、生き残るためのよりどころとし、世代をつなげていくため、安全に維持していかなければならない「環境」に対して、それぞれの種を構成するものによって寄与される奉仕、のことである。

植物には植物の、動物には動物の、菌類には菌類のコスミック・タスクがある。では、ことばや道具を生み出し、考える能力に優れた、私たち人類のコスミック・タスクは、なんだろう。生命の揺籃である地球にあって、すべての生きものが、環境の急変によって生存と世代交代の継承が危ぶまれることのないよう、運営していくことではないだろうか。

 

 

SCENE in the pen. 094

“Grasshopper on the sand”

On the beach in summer, many flowers of the roundleaf chastetrees fad grown into fruits. Bees were busily flying around the flowers that were still in bloom, sucking nectar. A grasshopper flew out from between them. I searched for where it had landed, but its body was buried in the sand and I couldn’t find it easily. [August 2025]

Oedaleus infernalis

 

海浜植物の茂みで跳ねたバッタは、クルマバッタモドキ。体は砂浜に似た色をしていますが、砂浜に限らず、背丈の低い草むらなどでも出会います。見た目が似ているヤマトマダラバッタも砂浜に生息しますが、全国的に数が減っており、なかなか出会うことができません。

 

「出版文化を考える会」について

8月から再開を予定していました「出版文化を考える会」は、一旦、休止します。少し先になりますが、2年後、会場である名古屋国際会議場がリニューアルされる2027年に、再開します。

再開後は、出版や文学に関わっている方々をお招きし、お話を伺いながら考えていく内容で、今後、検討していこうと思います。

あらためまして、これまでの資料や、当日話したことをまとめると、以下のような内容でした。

・「書肆花鑢の会社化について」

・「月刊『HANAYASURI』の復刊について」

・「文学者を知る」「熱田を知る」「和紙と産業」

資料の内容について考えられることは、まだ、たくさんあったと思います。途中で終わっている資料もあります。それらにつきましては、追加の資料がまとまり次第、本ブログで公開していきます。

 

SCENE in the pen. 093

“End of the rainy season”

Many green dragons (They were “O-Hange.”) were spread out by a pond of the woods. The end of the busiest period for rice farming is called “Hange-syo.” “Hange” is species of the green dragon family, “Karasu-bisyaku (crow dipper).” “syo” means born. In the past, the rainy season ended and the summer heat was in full swing when those plants grew. These days, the beginning of the summer’s heat seems to be earlier. [JULY 2025]

Pinellia tripartita

 

サトイモ科の植物、カラスビシャクは、漢方名を「半夏」といいます。カラスビシャクが田のそばに生える頃は、「半夏生」と呼ばれ、田んぼの繁忙期が一段落する頃として、農事暦にも用いられました。オオハンゲは、カラスビシャクよりも大きく、とくに三つ葉の大きさが特徴的です。

 

SCENE in the pen. 092

“Ant-lion’s adult”

The hot summer continues. However, there seems to be less humidity than every year in the woods, perhaps because the rainy season was short. A flattering lacewing flew in front of me. It is difficult to imagine their beautiful appearance as larvae feeding on ants. Every time I meet them, year after year, I enjoy the fact that nature is truly a wondrous and beautiful. [JULY 2025]

Baliga micans

 

梅雨が明ける頃、雑木林にウスバカゲロウがあらわれます。幼虫は、すり鉢状の巣を砂地につくり、アリなどの昆虫を捕食するアリジゴクです。巣と幼虫は、森の中の雨が当たりづらい砂地で一年中見かけますが、成虫のウスバカゲロウが林内を舞うのは夏だけです。幼虫が巣をつくらずに徘徊する、ホシウスバカゲロウも、知多半島に生息しています。

 

SCENE in the pen. 091

“Goby on the mudflats”

Gobies are often encountered in the sea and rivers. There are many species of gobies, some of which live in freshwater, others in the sea. Many also prefer brackish water. I cannot identify them immediately. On this day, gobies with black spots lined up and gobies with black fins were swimming on the mudflats. [JUNE 2025]

Favonigobius gymnauchen

 

ハゼの仲間は、海水、汽水、淡水、それぞれの環境に棲む種がいます。干潟で見かけたのはヒメハゼ。目の前に黒い斑があり、体にも4~5の黒い斑が並びます。

 

椋鳩十を読む会・7月

奇数月第3土曜日に開催している「椋鳩十を読む会」。椋鳩十の文学作品を読み解きながら楽しく活動しています。今回は、以下の内容で行います。

〇日程/2025年7月19日(土)13:00~16:30

〇場所/昭和生涯学習センター・美術室

〇アクセス/名古屋市営地下鉄「御器所」駅下車。2番出口を出て、御器所ステーションビルを右折し真っすぐ5分ほど歩くと着きます。有料駐車場有り(1回300円)。

地図はこちら → 昭和生涯学習センターの場所

〇参加費/大人500円、子ども(小学生以下)250円 ※資料代、会場代に使用

〇内容/①話題「9月の『椋鳩十を読む会』について」 ②課題図書「椋鳩十と戦争」 ③読み聞かせ「ぎんいろの巣」 ④歌の練習

〇備考/・「椋鳩十と戦争」(多胡吉郎/書肆侃侃房)は昨年出版された本です。椋鳩十の生涯を追いながら、本書の内容について考えます。事前に読んでご参加ください。・熱田図書館、読み聞かせの会「ピッピの会」のみなさんに「ぎんいろの巣」を読んでもらいます。・歌の練習は、これまでに覚えた曲を歌います。楽譜の無い方は当日お渡しします。・初めての方もお気軽にご参加ください。

 

「知多半島をめぐる」写真販売

「知多半島をめぐる」シリーズの新しい写真(PHOTOS vol.5)を公開しました。つきましては、4週間の期間限定で、「知多半島をめぐる PHOTOS vol.5」写真をプリント販売します。合わせて、1月に開催した写真展の写真も販売します(※PHOTOS vol.4の写真です。こちらは「〇」のあるものの販売となります)。

私たちが暮らす、そのすぐ隣りで、静かに息づいている自然の写真を、楽しんで頂けましたら幸いです。

 

〇販売期間/2025年6月24日(火)~2025年7月21日(月・祝)

〇販売内容/「知多半島をめぐる PHOTOS vol.5」の写真、および「知多半島をめぐる PHOTOS vol.4」の写真。

〇写真仕様/B4 正寸(257mm × 364mm)・インクジェット印刷・竹和紙

〇写真代金/1点につき、13,000円(プリントのみ)

〇額を購入される場合/1点につき、5,500円

〇送料/プリントのみの場合、840円 額装1点の場合、1,270円 ※定形外郵便+簡易書留の料金となります。額装2点以上をご注文される場合は、注文確認メールでお知らせします。

 

―ご注文からお届けまで—

①「ポートフォリオ」内「PHOTOS vol.4~5」より写真をお選びいただき、フォームよりご注文ください。

ポートフォリオはこちら

②フォーム送信後、数日以内に書肆花鑢より注文確認メールを送らせて頂きます。

③メールが届きましたら、注文内容に間違いが無いかご確認いただき、指定の振込口座に代金をお支払いください。

④お振込み後、注文確認メールに、発送先ご住所とお電話番号をご返信ください。

⑤「PHOTOS vol.5」の写真は、ご注文後の制作となります。7/7までにご注文いただいた場合、写真のお届けは7/20頃になります。7/8以降のご注文は、8/4頃のお届けになります。「PHOTOS vol.4」の写真は、ご注文を承り次第、すぐに発送させていただきます。

 

SCENE in the pen. 090

“Light purple little stars”

There were little flowers in the grass in the park along the muddy canal. They are called “Hinagikyou(means small balloon-flower)” because their flowers resemble Japanese ballon-flower(means Kikyou). The little flowers, shaped like stars and swaying in the sea breeze, made me feel that summer had arrived. [JUNE 2025]

Wahlenbergia marginata

 

夏がやって来ると、草むらで細い茎を揺らしている、ヒナギキョウ。1センチほどの小さな花を咲かせます。その色はうす紫色ですが、よく見ると趣深い色合いで、色名で言うなら「紅碧」が近そうです。

 

名古屋、野歩き(四)新地蔵川

3年前に始めた西味鋺観察会も、今月、矢田川での生きもの探しで27回目となる。この観察会は、地域の方々のご協力のもと、ある地域の自然の様子を通年で観察するというテーマで開催してきた。私たちが日々生活する環境には、どのような自然の変化があり、それらがどのようにつながり合っているのか、少しずつ分かってきた気がする。

西味鋺学区で特徴的な環境というと、「川」だろう。学区の南端を流れる、川幅の広い一級河川、庄内川と矢田川。それと、北端を流れ、農業排水や治水に利用される新地蔵川。

毎年夏に行う川の生きもの探しでは、ハグロトンボやコヤマトンボのヤゴ、テナガエビ、川の魚などが棲んでいることを確認してきた。調査場所の川岸に咲く花は、特徴的な外来の植物があらわれて、消える。オオカワジシャ、セイヨウヒキヨモギなど。川岸の昆虫では、クズの根元に虫こぶを作って育つ、フェモラータオオモモブトハムシなどを見つけた。矢田川、庄内川は、西味鋺学区の代表的な観察地になっている。秋には、庄内川の河畔林にいる虫たちを知るため、灯火採集も予定している。

一方、新地蔵川は、住宅街を流れる水路である。護岸された川には、柵もあり、容易には川辺まで下りられない。これまでの観察会では、川周辺の草花を調べてきた。タンポポ、スミレ、ノジシャ、カラスムギ、ヤグルマギクなど。観察会のとき、「一度、川の中に入って調べたいね」という声があり、観察会とは別に、調査をしてみることにした。

6月8日の午後、コミュニティセンターに集合し、新地蔵川へ向かう。上から川の様子を見ると、深そうである。春にはコイがたくさん来ていて、産卵行動をしていた。産卵場所にはセキショウモが繁茂しているのだが、写真を確認してみたところ、3年前には川に無かった。この2年の間に一気に増えたようだ。

東の思清橋近くの階段は、イタドリやヤブガラシが繫茂しており、道を歩いているだけでは、階段があることにも気づかない。狭い階段を一人ずつ下りる。階段の中ほどで、ハグロトンボが飛ぶ。上で待っている小学生たちが、この後ハグロトンボを捕まえていた。

胴長を履いた生まれも育ちも西味鋺のIさんと、先生が代表して川に入る。水の深さは膝上くらい。5~60センチ。川の流れは、緩やかである。川底の感触を聞くと、石の粒が矢田川よりも小さく、歩きやすいとのこと。対岸まで歩き、川底の砂利をすくいながら、生きものがいないか確認していく。「お、大きいのがいた!」と、声が上がる。見つかったのは、甲長7~8センチのモクズガニ。上からは、コイとアカミミガメくらいしか見かけることがない、街中の水路である。「矢田川にはいるけれど、新地蔵川にもいましたね」と驚きながら調査を続ける。この場所ですくえた生きものは、ほかに、ウナギの稚魚、ヌマエビ(スジエビ?)、ザリガニの子ども、ヒル。季節が変われば、まだ何か見つかりそうである。

40分ほど調べて、西側、川の下流へ移動する。西味鋺小学校近くの橋は慈恩橋という。こちらは護岸ブロックがむき出しで、階段も分かりやすい。ふたたび柵の鍵を開けてもらい、川へと降りる。今回は大人だけでの調査なので、水に入れない子どもたちから、「近くまで下りてもいいですか?」と声が掛かる。大人からのOKが出ると、嬉しそうに下りてきて、バケツを覗き込む。大人も、子どもたちも、それぞれの興味に従い自由に観察する、いつもの会とは異なり、調査や下見の際には、時間内にすべき仕事がある。年齢に幅のある小学生たちが、水に入るのは難しそうである。だが、自分たちが暮らす川に何がいるのか知りたいという気持ちは強いはず。中学生になったら、調査にも参加させてあげたい。

慈恩橋下で見つかった生きものは、ウナギの稚魚とミシシッピアカミミガメの子ども、ゴクラクハゼ。ゴクラクハゼは、ヨシノボリの仲間。河口付近の汽水に棲むが、ダム湖やため池など淡水にも棲むそう。河口からここまでやってきたのだろうか。調査のあいだに見つけた陸の生きものは、ハグロトンボ、アゲハチョウ、モンシロチョウ、ダンゴムシ、アリ、カメ7匹、ゴマダラカミキリ、セマダラコガネ、ヤマトシジミ、ガガンボ。確認した花は、ユウゲショウ、ノハカタカラクサ、オオキンケイギク、ランタナ、ムラサキカタバミ、オオカワジシャ、コセンダングサ、テリハノイバラ、クロガネモチ、コバンソウ、名前の分からない紫色の合弁花。そして水際にたくさん生えるイグサの仲間。

次回も楽しみな、第一回目の新地蔵川調査だった。