1月に一度、写真を整理したのだが、生きものについては、撮影データをすぐに確認できるようにしておこうと思い、2月半ばから撮影日や場所を表に記入していった。ついでに未確認にしてあったものも、できる範囲で確認していき、2週間かけてようやく終了。そうこうしているうちに、啓蟄になった。本格的に、生きもの達が動き出す。
観察場所に行き、時間をかけて歩きながら、出会った生きもの、植物、風景などを撮っていくという写真の撮り方をしているので、珍しい生きものは、それほど多くはない。どちらかというと、よく出会う生きものを何回も撮っていることが多い。一つの場所に時間をかけて、また、一年を通して何度も訪ねているので、一般的には、あまり注目されないような小さな生きものを撮っていることも、よくある。写真の整理をしながら、あらためて興味を引いた、そんな生きものについて、少し書いてみようと思う。
ユスリカ。「HANAYASURI」を作っているとき、ため池とユスリカをテーマに、近藤繫生先生に文章を寄せてもらった。観察会の報告会では、パワーポイントを使って解説していただき、誌面にもその内容を掲載した。ユスリカは、蚊に似た外見であるが、吸血しない。幼虫は、釣り餌にもされる赤虫で、水質浄化に役立っているという研究もある。どうしても大量発生した際の公害で注目されてしまうが、自然界においては、とても役に立つ存在と教えていただいた。日本には、高山から海岸まで、2000種以上いるくらい、種数も多い。四季を通してあらわれ、ある専門家の方は、「一年を通じて、われわれの生活の中で見かけない日はない」と書き記している。
観察をしていて、ユスリカと出会う機会は、たしかに多い。見かけると、少し時間をかけて葉などに止まるのを待ち、写真を撮る。撮った写真から後日、名前を調べようと試みるのだが、それぞれの種についての解説があまり見つからないため、ほとんど「ユスリカ類」に留めている。そのうち、知多半島のユスリカをテーマにした小冊子が作れないだろうかと考えながら、今は少しずつ、写真を撮り溜めている。
ザトウムシ。ザトウムシは、メクラグモという名前で呼ばれることが多かった。脚は8本あり、昆虫ではなく、クモガタ類に分類される。クモ、サソリ、ダニなどが近しい。ユスリカは、極地を含む世界中のあらゆるところに生息しているが、ザトウムシも極地、乾燥地以外のあらゆる陸地に棲んでいる。畑で土を掘ったり、枯れ草をどかしていると、サササッと素早く逃げていく。雑木林にもいて、赤い棘のあるゴホントゲザトウムシと出会うことが多い。以前、美浜町の海岸でザトウムシを見つけた。「おや、こんなところにザトウムシ」と、写真に撮ったのだが、海岸性のザトウムシは、ヒトハリザトウムシが唯一の種。自然海岸が減っているため、環境省のレッドデータで準絶滅危惧(NT)に指定されている。
ハエトリグモ。ハエトリグモは、巣を作らない徘徊性のクモの仲間で、種数も多く、日本では100種以上が確認されている。身近に出会うことも多い。家屋に棲み、黒い体に白い一本線が目立つアダンソンハエトリなどが、よく知られている。そういえば、家で飼っている黒猫の青葉が、拾ってきてすぐ、まだ手のひらに乗るくらいの大きさだった頃に、目の前をピョンピョンと跳ねるアダンソンハエトリを見つけて、遊んでいたことがあった。知多半島で観察していたとき、草むらでエサを捕獲していたハエトリグモがいたので調べてみると、ネコハエトリという種。体の毛並みや口元のモサモサした感じが、たしかにネコっぽいかなと思った。名古屋市では、2023年に生物多様性センターの主催で、市内と一部市外のハエトリグモを一斉調査したところ、市内で33種(市外を含むと35種)が見つかったそうだ。新しく見つかったものもあり、これまでに40種が確認されている。
最後に、イシノミについて。イシノミは、翅をもたない原始的な昆虫の仲間で、湿った土壌に棲む。古生代デボン紀の地層から化石が発掘されている、生きた化石。緑藻や地衣類を食べ、3年ほど生きる。知多半島でも、ため池近くの湿った地面や、雑木林の倒木近くで見かけるが、日本では、十数種しか知られていない。変化しないもの、単純なものをエネルギー源とし、自分たちも大きく変化せず、4億年という長い期間、世代交代を繰り返してきたということだろうか。激しい環境変化に身を変え続け、種数を増やし繁栄するものもいれば、単純で安定したものを選んだがゆえに、長く生き残るものもいるのだろう。
