3年前に始めた西味鋺観察会も、今月、矢田川での生きもの探しで27回目となる。この観察会は、地域の方々のご協力のもと、ある地域の自然の様子を通年で観察するというテーマで開催してきた。私たちが日々生活する環境には、どのような自然の変化があり、それらがどのようにつながり合っているのか、少しずつ分かってきた気がする。
西味鋺学区で特徴的な環境というと、「川」だろう。学区の南端を流れる、川幅の広い一級河川、庄内川と矢田川。それと、北端を流れ、農業排水や治水に利用される新地蔵川。
毎年夏に行う川の生きもの探しでは、ハグロトンボやコヤマトンボのヤゴ、テナガエビ、川の魚などが棲んでいることを確認してきた。調査場所の川岸に咲く花は、特徴的な外来の植物があらわれて、消える。オオカワジシャ、セイヨウヒキヨモギなど。川岸の昆虫では、クズの根元に虫こぶを作って育つ、フェモラータオオモモブトハムシなどを見つけた。矢田川、庄内川は、西味鋺学区の代表的な観察地になっている。秋には、庄内川の河畔林にいる虫たちを知るため、灯火採集も予定している。
一方、新地蔵川は、住宅街を流れる水路である。護岸された川には、柵もあり、容易には川辺まで下りられない。これまでの観察会では、川周辺の草花を調べてきた。タンポポ、スミレ、ノジシャ、カラスムギ、ヤグルマギクなど。観察会のとき、「一度、川の中に入って調べたいね」という声があり、観察会とは別に、調査をしてみることにした。
6月8日の午後、コミュニティセンターに集合し、新地蔵川へ向かう。上から川の様子を見ると、深そうである。春にはコイがたくさん来ていて、産卵行動をしていた。産卵場所にはセキショウモが繁茂しているのだが、写真を確認してみたところ、3年前には川に無かった。この2年の間に一気に増えたようだ。
東の思清橋近くの階段は、イタドリやヤブガラシが繫茂しており、道を歩いているだけでは、階段があることにも気づかない。狭い階段を一人ずつ下りる。階段の中ほどで、ハグロトンボが飛ぶ。上で待っている小学生たちが、この後ハグロトンボを捕まえていた。
胴長を履いた生まれも育ちも西味鋺のIさんと、先生が代表して川に入る。水の深さは膝上くらい。5~60センチ。川の流れは、緩やかである。川底の感触を聞くと、石の粒が矢田川よりも小さく、歩きやすいとのこと。対岸まで歩き、川底の砂利をすくいながら、生きものがいないか確認していく。「お、大きいのがいた!」と、声が上がる。見つかったのは、甲長7~8センチのモクズガニ。上からは、コイとアカミミガメくらいしか見かけることがない、街中の水路である。「矢田川にはいるけれど、新地蔵川にもいましたね」と驚きながら調査を続ける。この場所ですくえた生きものは、ほかに、ウナギの稚魚、ヌマエビ(スジエビ?)、ザリガニの子ども、ヒル。季節が変われば、まだ何か見つかりそうである。
40分ほど調べて、西側、川の下流へ移動する。西味鋺小学校近くの橋は慈恩橋という。こちらは護岸ブロックがむき出しで、階段も分かりやすい。ふたたび柵の鍵を開けてもらい、川へと降りる。今回は大人だけでの調査なので、水に入れない子どもたちから、「近くまで下りてもいいですか?」と声が掛かる。大人からのOKが出ると、嬉しそうに下りてきて、バケツを覗き込む。大人も、子どもたちも、それぞれの興味に従い自由に観察する、いつもの会とは異なり、調査や下見の際には、時間内にすべき仕事がある。年齢に幅のある小学生たちが、水に入るのは難しそうである。だが、自分たちが暮らす川に何がいるのか知りたいという気持ちは強いはず。中学生になったら、調査にも参加させてあげたい。
慈恩橋下で見つかった生きものは、ウナギの稚魚とミシシッピアカミミガメの子ども、ゴクラクハゼ。ゴクラクハゼは、ヨシノボリの仲間。河口付近の汽水に棲むが、ダム湖やため池など淡水にも棲むそう。河口からここまでやってきたのだろうか。調査のあいだに見つけた陸の生きものは、ハグロトンボ、アゲハチョウ、モンシロチョウ、ダンゴムシ、アリ、カメ7匹、ゴマダラカミキリ、セマダラコガネ、ヤマトシジミ、ガガンボ。確認した花は、ユウゲショウ、ノハカタカラクサ、オオキンケイギク、ランタナ、ムラサキカタバミ、オオカワジシャ、コセンダングサ、テリハノイバラ、クロガネモチ、コバンソウ、名前の分からない紫色の合弁花。そして水際にたくさん生えるイグサの仲間。
次回も楽しみな、第一回目の新地蔵川調査だった。