月刊誌、ふたたび

10月6日、秋晴れとなった武豊町自然公園で観察会を開催した。たくさんの生き物と出会うことができて、楽しい観察会だった。この日の会の始まりに、一つ、お知らせをした。月刊「はなやすり」を来年5月に復刊させようと考えている、という内容である。

4月号をもって休刊してから半年間、復刊した方が良いだろうという想いは頭のなかにあったのだが、一方で、もう復刊させなくても良いのではないかという考えもあった。今でも休刊を決めた時に思った、今、考えている大切な事柄は、すべてお伝えした、という気持ちは大きく変わっていない。この半年間、観察会を通して、写真を通して、また、さまざま訪ねた先で、たくさんの人たちと出会った。そうした出会いを繰り返していくうちに、本質的には同じことであっても、形を変えながら何度でも伝え続けるのが、定期刊行誌の役割である、という制作の原点に考えが巡って、想いが帰着した。

毎月楽しみにしてくださり、「また読みます」と言ってくださった方々、これから、どこかで存在を知り、読んでくださる方々。冊子の本質が変わらなくても、そういった方たちの生活は、時々刻々、変化していく。何かの縁あって「はなやすり」と出会った方たちが、日常生活や取り組みのヒントとなる誌面を、また制作していこう、それが出版社のあるべき姿だろう。編集者としての思考の流れをトレースしてみると、そんな感じだと思う。これまでも、大切なお知らせは、まず観察会で、というスタンスだったので、ちょうど休刊から半年となる10月最初の観察会でお伝えすることにした、というわけである。

ただ、そう考えていても、購読者数が見込めないと復刊は難しい。なので、復刊を決める前に、読んでくださる方を増やさないといけない。どれくらいの数が必要かというと、最低でも、500。安定して発行を継続していくためには、700以上が望ましい。復刊のお知らせをして、すぐにそれだけの数が集まることは考えにくいので、来年3月までの半年間、徐々に周知して、購読してくださる方を増やしていけたらと思っている。

復刊後の内容はというと、「6つの編集方針」は、そのまま継続する。ここまでの半年間、自分が訪れた場所や考えていたことは、エッセイにも書いてきたので、自分でもあらためて読み直し、その内容を掘り下げていくつもりである。

もう少し具体的なキーワードを書くと、まずは「自然」「文学」「子どもたちの未来」という大きなテーマがある。「はなやすり」において、それらが重なり合い、響き合っていることはもう、ご承知いただいていると思う。

「自然」は、これまでは、知多半島の自然にまつわる話題と、「ユスリカ」「水」といった個別テーマで、研究・調査をされている先生方に文章を寄せていただいた。これからも自然について、真摯な取り組みをされている方々と、出会っていきたい。観察会レポートは、自然との関わり方の共感を生んでいると思う。これまでに2度開催した観察会報告会も、定期的にできたらよいな、と考えている。

「地域」という視点で考えると、「知多半島」「熱田」それと「伊那谷」というキーワードが浮かび上がる。それらを、その土地を管理する自治体の行政区分で、分けて捉えるのではなく、自然の動きや人の動きに連動した一連の地域という捉え方で考えれば、その周辺の土地や、物理的には遠く離れた土地も、視野に入ってくる。

書肆花鑢が考える「文学」について、より深く知るためには、「椋鳩十を読む会」「出版文化を考える会」などの会に参加していただくことが一番だと思うが、これからの文学を考える入り口となる文章を、ご協力いただき、掲載していきたい。今のところ思い浮かんでいる具体的なキーワードは「椋鳩十」「新美南吉」「巽聖歌」「藤井達吉」などである。

日常エッセイ、詩、絵のコーナーは、編集していても毎回楽しいページである。復刊後もたくさんの人に登場していただき、楽しくにぎやかなページを作っていきたい。

最後に、子どもたちの「未来」については、私は明るいと思っている。そのために、大人の都合ではなく、子どもたちが学び育つ環境に本当に必要なことを考えて、整えていかなくてはいけないだろう。今年の秋、とても長い年月を、信念をもって取り組まれた活動が、大きく結実したニュースが続いた。コツコツと真面目に取り組んできた人々に温かく陽の光が注ぎ、花が咲き、結実する時代。社会は、これから大きく変わっていくはずだ。